十、消費税関係

1. (基準期間制度の廃止について)

 免税事業者及び簡易課税選択適用事業者の判定をする場合の基準期間制度を廃止し、当該課税期間の課税売上高により判定すること。

(消法9@、37@)

<理 由>

 基準期間制度を廃止することにより免税事業者については基準期間の課税売上高3,000万円以下の場合、課税事業者の選択をしなければその翌年及び翌々年の課税売上高が3,000万円を越えても納税義務が免除されることの矛盾が回避される。このことにより、預かり税としての消費税の制度により合致した制度となり、いわゆる益税とされる一部が解消される。      

 また、簡易課税制度選択届出書の効果が納税額に与える影響は大きく、簡易課税の適用の判断は重要である。簡易課税制度は、中小事業者の事務負担の軽減を考慮した制度であることからも、申告年度の課税売上高によって判定した方が、予測計算等の煩雑性、錯誤及びトラブル等が避けられ、簡易課税制度の趣旨に沿うことにもなる。

(免税制度について)

2. (免税制度の維持について)

現行額程度の免税制度を維持すること。

(消法9@)

<理 由>

 免税点以下の小規模事業者については、消費税の転嫁が十分に行われていないことや事務負担の軽減の配慮、また平成9年4月からの税率引き上げにより、さらに消費税の転嫁が困難となることから、今後も現行の額程度の免税制度を維持すべきである。

3. (還付の場合の申告について)

 免税事業者の課税選択方式を廃止し、還付の場合には申告により還付の請求ができることとすること。

 (消法9C)

<理 由>

 消費税は預かり税であるので課税売上高3,000万円以下の小規模事業者であっても納税し、又は還付が受けられるのが原則である。しかし上記2の理由により免税制度を維持することは必要ではあるが、免税制度を維持することにより還付が受けられないことは、消費税の制度の趣旨に照らし不合理である。

 さらに、還付請求は免税事業者の課税選択方式によるのではなく、免税事業者が申告するだけで実施できるようにして、課税選択方式による消費税課税制度の煩雑性かつ難解性を排除すべきである。      

(限界控除制度について)

4. (限界控除制度の維持について)

一定の範囲内での限界控除制度は必要であること。

(消法40)

<理 由>

 限界控除制度の廃止により、基準期間の課税売上高が3,000万円以下の事業者が課税事業者を選択した場合は納税額が生ずるが、免税事業者には納税額が生じないという不合理がある。

 したがって、この不合理の解消のため、また、急激な税負担の緩和策としても一定の範囲内での限界控除制度は必要である。

(簡易課税制度について)

5. (簡易課税制度の事業区分及び適用金額について)

 現行の5種類の事業区分を維持し、適用金額の2億円を4億円に戻すこと。

(消法37)

<理 由>

 簡易課税制度は、中小事業者の事務負担の軽減のための制度であることから、一定の範囲内で必要である。また、いわゆる益税も生じている制度でもある。しかし、平成3年度の「2種から4種への改正」及び9年度の「5種への事業区分及び適用金額の改正」により、益税は大幅に解消されている。

 したがって、今後これ以上事業区分を細分化すべきでなく、また、中小事業者の事務負担の軽減の見地からも適用金額は4億円に戻すべきである。

 なお、簡易課税制度を選択した事業者については、多額の設備投資等をした場合はいわゆる損税も発生することから、投資税額控除を創設するなど、現行の仕入税額控除制度の改善を図る必要がある。

6. (業種の事業内容の規定について)(新設)

 消費税法に第1種から第5種の事業内容を規定すること。

(消法37)

<理 由>

 簡易課税の事業区分は納税額に与える影響が大きく、また、その判定は困難である。

 したがって、第1種から第5種の事業内容は、通達によることなく、租税法律主義の見地からも法律で規定すべきである。

(仕入れに係る消費税額の控除)

7. (一括比例配分方式の選択について)

 一括比例配分方式を選択した場合は2年間取りやめをすることができないが、この期間制限を廃止すること。

 (消法30D)

<理 由>

 前課税期間に一括比例配分方式を選択した場合にはその課税期間の初日から2年間は個別対応方式を採用できないことにより、納税義務者に不利益を強いる場合がある。

 個別対応方式から一括比例配分方式に変更する場合は期間制限がないので、一括比例配分方式から個別対応方式に変更する場合も同様とし、計算方式の変更に関する期間制限を廃止すべきである。

8. (投資税額控除について)(新設)

 簡易課税制度を選択した事業者について、投資税額控除制度を創設すること。

<理 由>

 簡易課税制度のみなし仕入率は、高額な設備投資を含まず、仕入、経費及び通常の設備投資を基に計算していると考えられる。

 したがって、簡易課税制度を選択した事業者が一定額以上の設備投資をした場合は、みなし仕入率による現行の仕入税額控除の他に、高額な設備投資に対する投資税額控除を認めるべきである。

 このことにより、簡易課税制度の欠陥である、いわゆる損税の一部が解消されることになる。

9. (課税売上割合が95%以上の場合の仕入税額控除について)(新設)

 課税売上割合が95%以上の場合における仕入税額の全額控除の適用範囲を限定すること。

 (消法30A)

<理 由>  

 課税売上割合が95%以上であるときは、課税仕入税額が全額控除でき、いわゆる益税が発生し、特に大企業にとってはその額は多額となる。

 したがって、資本金1億円超の法人については、この適用から除外すべきである。

10. (インボイス方式と帳簿及び請求書等の保存について)

 帳簿方式を維持し、現行の「帳簿及び請求書等」の保存を「帳簿又は請求書等」とすること。

 (消法30F)

<理 由>

 帳簿方式は、インボイスに代えて帳簿又は請求書等の保存を前提としているものであり、統一形式によるインボイスの発行・集計及び帳簿との突合等の事務負担を軽減している。また、帳簿方式は徴税コストの軽減にもつながり、さらに今日定着していることからも、帳簿方式は存続させるべきである。

 なお、平成8年9月に国税庁からの事務連絡(Q&A 仕入税額控除の要件における「帳簿」の記載方法等について)が発表されたが、その内容は、事業者の事務負担を極力増加させないことを基本方針としているものの、Q&Aを発表すること自体が、すでに、「帳簿及び請求書等の保存」の実行性の難しさを示している。よって、従前どおり「帳簿又は請求書等の保存」に改めるべきである。

 また、EC型のインボイス方式に近づけるような改正はすべきでなく、さらに、請求書等に事業者番号の記載を義務づけるような改正の方向は、納税者番号制度の導入につながるおそれがあるので、慎重に検討されなければならない。

(課税標準について)

11. (課税標準について)

課税標準を「課税売上高」から「課税売上高から課税仕入高を控除した額」に変更すること。

(消法28)

<理 由>

 法人税・所得税においては、「益税から損金、または、総収入金額から必要経費を控除した金額」を課税標準と規定しているが、現行の消費税法は、「課税売上高」を課税標準とする帳簿方式による税額控除方式である。しかし、消費税は、企業が生み出した付加価値に対し課税するものであるから、税額控除方式から取引高控除方式に改め、消費税の課税標準は、「課税売上高から課税仕入高を控除した額」とすべきである。

(税率について)

12. (税率の引き上げについて)

 税率は低税率に留めること。

 (消法29)

<理 由>

 税率については、消費税創立の状況も踏まえ、また、我が国の租税体系のあり方としては直接税中心の租税体系を維持すべきであり、消費税は担税力及び逆進性に問題があるので、課税の公平を歪めないためにも、税率は低税率に留めるべきである。

 平成9年4月より、税率は5%に引き上げられたが、このような引き上げについては、高齢化社会に対応する福祉ビジョンや財政再建の具体策等を明らかにした上で、国民のコンセンサスを得るべきである。

(申告書の提出期限について)

13. (申告書の提出期限の規定について)

 消費税の申告期限について、法人の場合、法人税の申告期限延長(法人税法第75条の2)の届出をした場合は消費税の申告期限についても同じ措置をすること。また、個人については租税特別措置法で翌年3月末日となっているがこれを消費税法で規定すること。

 (消法45,措法86の5)

<理 由>

 実務的には、事業者(個人・法人とも)は決算の確定作業の中で消費税の申告作業をするので、法人の場合、法人税の申告期限延長の措置をした場合は消費税の申告期限についても同じ措置をすべきである。また、個人については確定申告期限との関係で翌年3月末日と消費税法にて規定すべきである。 

14. (相続の場合の消費税の確定申告書の提出期限について)

 個人事業者が死亡した場合の消費税の確定申告書の提出期限を、現行の4カ月から相続税の確定申告書の提出期限とすること。

  (消法45A)

<理 由>

 個人事業者の死亡の年の消費税は、相続税の計算上債務控除できるので、消費税の計算を先行させることは必要であるが、その申告期限を区別することについては実益に乏しく、また手続も煩雑であるので、相続税の申告期限と同一にすべきである。

(各種届出書の提出期限について)

15. (各種届出書の提出期限について)

消費税の各種届出書及び承認申請書(課税売上割合に準ずる場合の適用承認申請書など特別の承認申請書を除く)の提出期限は、その適用を受けようとする課税期間の前課税期間の確定申告書の提出期限までとすること。

 (消法45他)

<理 由>

 消費税の各種届出書及び承認申請書の効果が納税額に与える影響は大きいので、届出書及び申請書の是非の判断は必要である。

 実務的には、決算の確定作業の中で消費税の申告作業と届出の手続などの是非の判断をするので、前課税期間の末日までにこの判断をすることは困難であり、また、提出期限までに失念することも多い。

 よって、消費税の各種届出書などについては、適否の適切な判断ができるよう前課税期間の確定申告書の提出期限までとすべきである。

 なお、本来は現行の基準期間制度を廃止し、免税事業者及び簡易課税制度の判定にあたっては、当該課税期間の課税売上高に基づく方が預かり税としての消費税の制度の趣旨に合致することになる。

 したがって、各種届出書の提出期限は当該課税期間の確定申告書の提出期限と同一とすべきである。

16. (各種届出書の提出期限の規定について)

 消費税法に各種届出書の提出期限の規定をすること。

(消法10A)

<理 由>

 国税の申告、申請、届出等に関する提出期限が、土曜日・日曜日又は国民の祝日等に当たるときは、これらの日の翌日をもってその期限とみなされる。(通法10A)

 しかし、消費税法上の各種届出書の提出に関しては、その効力発生の時期は規定されているものの提出期限については規定されていないため上記国税通則法の規定が適用されない。例えば、前課税期間の末日が日曜日の場合「課税事業者選択届出書」を翌日に提出した場合には、提出した日の属する課税期間の翌課税期間から適用されることになり、適用開始期間が1課税期間遅れてしまい、消費税の各種届出書等の効果が納税額へ与える影響は大きい。よって、他の国税と区別する理由もないので、国税通則法の特例の規定が適用できるよう提出期限を消費税法で規定すべきである。

17. (各種届出書等の取りやめ期間について)

 簡易課税制度及び課税事業者の選択は、その届出書の提出後2年間取りやめをすることができないが、この提出期限の制度を廃止すること。

    (消法9E、37B)

<理 由>

簡易課税制度は中小事業者の事務負担の軽減を考慮した制度であり、また、課税事業者選択制度は、免税制度によって還付ができない事業者を救う制度でもある。この選択の是非の判断を2年間にわたって判断するのは非常に困難であり、また、この課税期間について本来生じていない税を負担する場合もある。したがって、これらの選択届出書の提出期限の制限を廃止すべきである。

18. (相続の場合の簡易課税制度選択届出書の提出期限について)

 相続の場合の簡易課税選択届出書の提出期限は、相続税の確定申告書の提出期限と同一にすること。

  (消法37)

<理 由>

相続の場合は、相続人が免税事業者でも被相続人の課税売上高と合算して基準期間の課税売上高を算定するので、課税事業者となる場合が生じる。この場合、簡易課税制度選択届出書を前課税期間までに提出することについて不可能な場合も生じる。

 したがって、このような場合の簡易課税制度選択届出書の提出期限は、相続税の確定申告書の提出期限と同一とすべきである。

(経理処理方式について)

19. (寄付金・交際費の損金不算入額の計算及び少額減価償却資産の判定につい  て)

 寄付金、交際費の損金不算入額の計算及び少額の減価償却資産等の判定につき、事業者の経理処理にかかわらず税抜きの金額を基準とし、その計算及び判定をすること。

<理 由>

 消費税は、消費者から「預かった税」を納税義務者(事業者)を通して国庫に納付する間接税であり、会計理論上の収益費用を構成するものではない。

 このことは、事業者の経理処理方式が消費税を税込みで処理するか税抜きで処理するかで課税標準が異なるものでない。

 よって、税込経理であっても、少額の減価償却資産(繰延資産等を含む。)の取得価額の判定及び寄付金・交際費の損金不算入額の計算においては、税抜きにて計算及び判定すべきである。

                    

20. (免税事業者の基準期間の課税売上高の算定について)

 基準期間に免税事業者であった場合の基準期間の課税売上高の算定については、税抜金額で算定すること。

<理 由>

課税庁は、「基準期間における免税事業者については、売上について消費税が課されていないことから売上に伴って収受する金額が基準期間における課税売上となる。(基本通達1−4−5)」との見解をとっている。

 しかし、下記の理由により、免税事業者は実質的に消費税を転嫁していると解釈すべきである。

 @ 消費税は、納税義務者(事業者)を通して国庫に納付される消費者からの「預かり  税」としての間接税である。

 A 免税制度は、中小事業者の事務負担の軽減のために設けられた制度であり、納税義務を単に免除しているにすぎないこと。

 B 税制改革法第11条においては、「事業者」による消費税の円滑かつ適正な転嫁を要請しており、この「事業者」から免税事業者を除外していないこと。

 C 例えば、毎年3,050万円税込み課税売上がある場合、2年毎に免税事業者になったり、課税事業者になったりして不合理であること。

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