八、法人税関係

1. (公益法人等に対する課税の見直しについて)

 公益法人等に対する課税について、次のように見直しを図ること。

  @ 法人税が課税される収益事業の範囲を、定款又は寄付行為における事業目的のうち実質的に公益に寄与する行為以外とすること。

  A 収益事業から生ずる所得に対する法人税率は、普通法人の税率と同一とすること。

(法法<66の3、法令3)

<理 由>

 公益法人等は、収益事業を営む場合に限り、その収益事業から生ずる所得についてのみ課税される。また、その収益事業の範囲は限定され、かつ、継続して事業所を設けて営まれるものから生ずる所得として規定されている。

 ところで、普通法人は、すべての取引から生ずる所得について課税されていることに鑑み、公益法人等の課税所得の範囲は、いわゆる収益事業から生ずる所得に限定することなく、その公益法人の本来の目的以外のすべての事業から生ずる所得についても、課税対象に含めるものとすべきである。

 また、公益法人といえども、収益事業に対する法人税率は、普通法人と同じ税率とすべきである。

2. (受取配当金等の益金不算入制度の廃止について)

 受取配当金等の益金不算入制度を廃止すること。

(法法23)

<理 由>

 わが国では、法人擬制説の立場により、法人、個人間の二重課税調整のため設けられた制度であるが、現在の株主割合を見た場合、法人の持株割合が大きく、法人相互間で70%以上所有している。本来、法人の所得は、最終的には個人に帰属するという機能が失われているのが現状である。

 法人間配当が拡大している現在、受取配当を益金不算入にすれば、ますます独占度を強め、また、配当が一部に集中する恐れがある。

 このような状況のもとで、個人株主の負担調整に重きをおいた二重課税調整は、その重要性と意味があまりなくなったので、基本的な仕組みのあり方について見直しを行い、廃止の方向で検討すべきである。

3. (交際費等の定額基準内の10%課税の廃止について)

 中小法人の交際費等の定額基準内の10%課税制度は廃止すること。

(措法61の4)

<理 由>

 交際費課税の趣旨は、企業の冗費抑制と自己資本の充実と考えられるが、中小法人の定額基準内であっても10%課税が導入され、冗費といえない費用も含めて、すべて課税対象とすることに強化されており、企業経営の実態にそぐわないものとなっている。

 したがって、中小法人の交際費等の定額基準内の10%課税制度は廃止すべきである。

4. (交際費課税制度の見直しについて)

 (1)  慶弔費用や社会的奉仕団体に係る会費等については、交際費の範囲から除外すること。

(措令37の5)

 (2) 交際費の支出に伴い、得意先等から受入れる祝金があった場合には、これを支出交際費から除外すること。

                                 (措法61の4)

 (3)  交際費等の具体的適用についは、通達ではなく、施行令等の法令により規定すること。

(措法37の5)

<理 由>

 交際費課税の趣旨は、企業の冗費節約と自己資本充実にあったが、最近では、税収確保の見地から、社会通念上必要されるべき交際費まで課税範囲に含まれている。

 (1)  慶弔費用は、わが国の社会習慣として定着したものであり、相当額については交   際費等の範囲から除外すべきであり、また、ロータリークラブ等の社会奉仕団体は、   社会奉仕を目的としたものであり、これらの活動に伴う費用は、交際費等の範囲から除外すべきである。

 (2)  支出交際費と関連して受入れた祝金等を控除しないで限度計算を行うことは、結果的に二重課税の可能性があるので、祝金等があった場合には、これを当該支出交際費から控除すべきである。

(3)  交際費等の範囲に関する具体的な適用は、そのほとんどが通達に依存している。   交際費の適用は、その範囲も広く、恣意的判断に陥りやすいので、租税法律主義の   立場からも課税要件を法令により規定すべきである。

5. (使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例について)

 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例は廃止すべきである。

(措法62)

<理 由>

 従来から使途不明金は損金不算入とされており、地方税を含めて慨ね60%の法人税の課税が行われており、さらに、特定の支出に対して40%の追加課税としたことは、法人所得を課税標準とする法人税の税体系を著しく歪めるものである。

 不公正取引に起因する違法不当な支出金については、本来、業界の自主規制や商法刑法などの他の法律による規制等により対応すべきであり、使途秘匿金の支出の課税の強化による税制で対応すべきものではない。よって早急に廃止すべきである。

6. (新規取得土地等に係る負債の利子の課税の特例について)

 新規取得土地等に係る負債の利子の損金算入の制限の特例を廃止すること。

(措法62の2)

<理 由>

 昭和63年12月31日以後適用されたこの規定は、土地の異常な高騰に対処するための政策的見地から立法されたものとされているが、税務会計理論上、期間損益の上からも問題があり、税法の簡素化の要請にも逆行するものである。

 また、課税の公平の見地からも、借入金による土地以外の資産の取得との整合性の観点からも、本規定を廃止すべきである。さらに、土地価格の鎮静化された今日、本規定を存続させる必要性はない。

7. (土地譲渡益重課制度等の廃止について)

 土地譲渡等のある場合の特別税率の規定を廃止すること。

(措法62の3、63、63の2)

<理 由>

 土地政策としての上記のような制度は、土地価額の推移に対し硬直的(問題提起から施行まで最低2年程度を要する)であり、金融政策のような柔軟な対応ができない。

 また、多くの除外規定により、大手企業は適用対象となることが少なく、中小法人に過重な税負担を強いるものとなっている。土地政策は、国の基本的な政策の中で行い、税制にかたよることは望ましくないので、措置法62条の3(土地譲渡益の重課制度)、同63条(短期所有に係る土地の譲渡の重課制度)及び同63条の2(超短期所有土地譲渡益の分離課税制度)については廃止すべきである。

8. (貸倒引当金繰入の簡便法を適用できる法人の範囲を拡大すること)

(法法52、法法令96、97)

<理 由>

貸倒引当金の繰入額を計算する場合において、昭和55年4月1日に存する法人については、「実質的に債権とみられない金額」を計算する場合、原則計算と簡便計算とのいずれかを毎期計上することができるが、それ以後に設立された法人については、その選択ができず不公平である。

簡便計算は、ほとんどの法人について適用できるよう基準年度を変更するなどの改正をすべきである。

9. (青色申告法人の欠損金の繰越控除期間の延長について)

 青色申告法人の欠損金の繰越控除の適用期間を7年に延長すること。

(法法57)

<理 由>

 競争力の弱い中小企業においては、現行の5年の繰越期間においても、欠損金を吸収できないケースが多く見受けられる。企業の体質を強化するとともに、育成する意味からも、適用期間を7年に延長すべきである。

10. (欠損金の繰戻しによる還付制度の復活について)

 法人税の欠損金の繰戻しによる還付制度を復活すること。

(措法66の14)

<理 由>

 平成4年度から欠損金の繰戻還付制度が停止されているが、税収不足を理由に安易に法人税法に定める規定の停止等を行うべきでない。

 なお、このような措置は、税制の法的安定性と予測可能性を害するものである。

11. (中小法人の軽減税率について)

 資本金1億円以下の中小法人の軽減税率引き下げと、適用範囲の拡大をすること。

(法法66)

<理 由>

 わが国経済の底辺を支える中小企業の経営基盤が弱いことに配慮し、軽減税率の適用所得金額を年1,500万円程度に引き上げるべきである。また昭和63年以降の税制改正では、中小法人に適用される軽減税率の引き下げ幅は、基本税率に比べ低く抑えられたことからも、その軽減を図るべきである。

12. (同族会社の留保金課税の廃止について)

 中小法人に対する同族会社の留保金の特別課税制度は廃止すること。

(法法67)

<理 由>

 この制度の立法趣旨は、同族会社の株主と非同族会社の株主及び個人企業との間の負担の公平を確保するための措置であるとされている。しかし、一般に会社が財務体質の強化のため、利益の配当を抑え社内留保することは、健全な経営政策として一般に是認され、かつ、会社法上も債権者を保護し、資本充実の要請にも応えるものである。にもかかわらず、同族会社の留保金課税の制度は、経営基盤の弱い中小規模の同族会社に対し、追加的負担を強いる結果となっている。

 また、繰越欠損金の控除により課税所得額が零の場合でも、当期留保金額の計算では繰越欠損金控除の適用がないため、留保金に課税される場合がある。

 このように、留保金の特別課税制度は、中小規模の同族会社における健全な経営維持を阻害するものとなっており、廃止すべきである。

13. (使用人兼務役員の退職給与引当金について)

 使用人兼務役員の退職給与支給額を退職給与引当金の対象に含めること。

(法法55、法令106)

<理 由>

 使用人兼務役員に対する退職給与のうち、使用人たる地位に基づく部分については、退職給与引当金繰入の対象に含めることとし、実態に即した方法にすべきである。

14. (過大な役員給与の判断基準について)

過大な役員給与の判断基準の規定のうち「その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する」の部分は削除すべきである。

(法法34・法令69、法法36・法令72)

<理 由>

政令69条・72条で過大な役員報酬及び退職給与の額についての判断基準として、「その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する報酬(退職給与)の支給に照らし」とあるが、類似法人の選択・比較は困難であり、よって法令のこの部分は削除すべきである。

15. (予定納税基準額について)

 予定申告書の提出不要の予定納税基準額を30万円以下(現行10万円以下)に引き上げること。 (法法71)

<理 由>

 昭和49年度より現行のまま据え置かれており、その後の物価上昇、経済活動の規模の拡大にもかかわらず見直しが行われていない。

 事務簡素化の点からも改正すべきである。

16. (法人の青色申告承認申請書等の提出期限について)

 法人の青色申告承認申請書、棚卸資産の評価方法・有価証券の評価方法及び・減価償却資産の償却方法の変更届出書の提出期限を、前事業年度の確定申告書の提出期限まで延長すること。

<理 由>

 現行法は、設立第1期に該当する場合を除き「当該事業年度の開始の日の前日まで」とされているが、納税者の便宜と税務行政の円滑な運営のため、当該申請書等の提出期限は、「前事業年度の確定申告期限まで」に延長すべきである。

17. (法人税と法人事業税の清算確定申告期限について)

 その残余財産が確定した日の翌日から1カ月以内となっているが、2カ月以内とすること。

(法法104、地法72の31)

<理 由>

 通常の確定申告と特に区別すべき理由はない。

18. (利子・配当等に係る所得税額の控除等の特例措置について)

 利子・配当等に係る所得税額の控除等の特例措置を廃止すること。

(措法68の2)

<理 由>

 平成5年度の税制改正により、利子配当及び割引債の償還差益の源泉徴収税額のうち、当期の法人税額から控除しきれなかった部分については4年間還付が停止された。このような規定は、税制を歪め、特に赤字法人に対して、企業の継続を阻害するなど不合理な措置であるので廃止すべきである。

 なお、同様の措置は、昭和60年4月から平成2年3月までとられたが法人税における源泉所得税の控除制度の本則を無視したものであり、同じ措置を繰り返すべきでない。

19. (申告書の自署押印、罰則規定について)

 経理責任者の自署押印を廃止し、罰則規定から使用人、その他の従業者を除外すること。                              (法法151、161、184)<理 由>    

法人税法第151条(代表者等の自署押印)第2項は、代表者のほか、経理責任者である職員の自署押印を求めている。

 自署押印の制度は、脱税の場合の両罰規定を前提に、法人の組織における責任の所在を明らかにするためであるとされている。

 代表者が経理責任者を兼ねている場合は、経理責任者が経理に関する最終責任を負うことができるが、指揮監督を受ける立場の職員等が経理責任者の場合、重い責任を課すのは妥当ではない。経理責任者が自己の意に反して申告書の記載をした場合の免責のための「経理責任者の意見」欄も、わが国には馴染まないとして昭和40年代に廃止された経緯もある。申告書の記載内容は、全て代表者が責任を負うべきである。

 事業税には同様の規定があるが、所得税等にはない。一部の税目のみ、このような規定を置くのは均衡を欠く。

 また、自署押印の制度は、納税者が脱税をして処罰されることのないようにと注意を促す牽制の意味もあるようだが、そもそも、このような発想は、戦後の混乱した一時期ならともかく、現在では時代遅れで、納税者は、誠実であるとして処遇するのが先進国の潮流である。

20. (法人税の延納制度の復活について)

 中小法人については、法人税の延納制度を復活させること。

<理 由>    

 昭和59年度税制改正により延納制度が廃止されたが、これによって、特に中小法人の納税期の資金繰りを圧迫し、一時に納税することが困難な場合がある。

 所得税の確定申告による延納制度のあることを考慮し、中小法人に対しては、延納制度の復活をすべきである。

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