六、国税共通関係

1. (少額減価償却資産及び繰延資産の損金算入限度額の引き上げについて)(所  得税・法人税)

 少額減価償却資産及び繰延資産の損金算入限度額については、50万円以下に引き上げること。

(所令138・139、法令133・134)

<理 由>

 平成元年4月1日からは、少額減価償却資産等の損金算入限度額は20万円未満に引き上げられたが、現在の什器、器具等の多様化と価格水準から50万円以下までに引き上げ、税務会計事務の簡素化に資することとすべきである。

 また、繰延資産についても少額減価償却資産と同様に、現在の価格水準からも期間損益上も問題は少なく、50万円以下までに引き上げるべきである。

2. (利益積立金額の資本組入れについて)(所得税・法人税)

 利益積立金額の資本組入れに対するみなし配当規定を廃止すること。

(所法25A・法法24A)

<理 由>

 株主の持分は、相続税における純資産方式による株式評価のように、会社の貸借対照表の資本の部(純資産)であると考えるならば、株主の持分は、日々増減し、会社の決算及び利益処分により、一部が配当として実現した所得となり、一部が役員賞与等として流出することにより持分が減少して、株主持分の未実現の増減額が一応確定する。

 利益積立金の資本組入れは、株主持分(割合的利益)の変更がなく、株主持分の中での名目的な移動にすぎず、その行為によっては、何らの所得も発生しない。したがって、当該規定は廃止すべきである。

 株主持分の増加額については、譲渡の時又は会社の清算の時に課税することとすれば足りる。

3. (同族会社の行為計算否認規定の廃止について)(所得税・法人税・相続税)

 同族会社の行為計算否認規定を廃止すること。

(所法157・法法132・相法64)

<理 由>

 同族会社の行為計算否認規定は、条文において「これを容認した場合には税の負担を不当に減少させる結果となる」とだけ表現しているために要件が抽象的であり、行為計算を認定する税務署長の裁量権については、その基準が不明確である。租税法律主義による課税要件明確の原則に反するこのような課税の一般条項は、廃止すべきである。

4. (予定申告について)(法人税・消費税)

 法人税及び消費税の中間申告の規定のうち、前事業年度の税額を基準とするいわゆる「予定申告」については、予定申告書の提出を要しないこととし、税額の納付だけに止める制度とすること。

(通法15B)

<理 由>

 法人税及び消費税については、申告納税方式の租税という性格から、その税額の確定のための手続きとして、予定申告制度の趣旨は理解できる。しかし、中間申告書の提出がない場合には、みなし規定が働き、その事務は単なる形式に止まっている。

 そこで、法人税及び消費税については、所得税における予定納税と同様に、国税通則法第15条第3項の特別の手続きを要しないで納付すべき税額が確定する国税として定め事務の煩雑さ等を考慮して予定納税制度とすべきである。                                        

5. (申告書の公示制度の廃止について)(所得税・法人税・相続税・地方税)(新設)

 申告書の公示制度を廃止すること。

(所法233、法法152、相法49、地法34)

<理 由>

昭和22年に第三者通報制度と、この前提となる申告書等の閲覧制度が設けられた。これは、無申告者や過少申告の事実を知る者が、その事実を国に通報することを、報奨金を出して奨励する制度である。

 その後シャウプ勧告により、申告書等の閲覧制度は申告書等の公示制度と改められ、昭和29年には、第三者通報制度は廃止された。しかし、高額所得者についての申告書の公示制度は、なおその必要性があるものとされ現在も存続している。

 納税意識の高揚、税務調査技術の進歩及び高度化された税務情報収集能力等、現代における納税環境と同制度の新設時の社会的・経済的及び納税環境は、大きく異にしている。

 したがって、プライバシーの保護や経済取引への影響等を考えると、申告書の公示制度は廃止すべきである。

6. (法定耐用年数表の見直しについて)(所得税・法人税)

減価償却財産の法定耐用年数表の見直しを図ること。

<理 由>

 現行の法定耐用年数や法定耐用年数表(の細目)は、昨今の技術革新の急激な変化や資産の多様化によって、実態にそぐわなくなっている。

 したがって、償却の実態、技術の革新の現状に即して、定期的(概ね3年程度)に法定耐用年数及び細目の見直しと整備をすべきである。

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