昨年8月、司法制度改革推進本部あてに「行政訴訟制度の見直し」に関するパブリック・コメントを入れました。
行政訴訟の改革として、税務訴訟を中心に要点をまとめて意見を述べています(別項に掲載)
 本稿は、同推進本部・行政訴訟検討会の審議から抜粋して税務訴訟改革の意見・提言を紹介します。


      税務訴訟をめぐる「司法制度改革推進本部・行政訴訟検討会」の審議から

1.被告国側の指定代理人制度と裁判所調査官制度について
 ○第12回会合 平成15年1月15日議事概要(弁護士水野委員の発言)から抜粋
指定代理人制度であるが、いろいろと問題点がある。まず、いわゆる訟務検事以外に担当の官庁の訟務官などが指定代理人として出てくるが、一つの事件で、多い時には10名を越える場合もあり、そのために、なかなか期日が入りにくいということがある。準備書面を被告が出す場合も、決裁がかなりあるので、なかなか先にしか入らない。
そのような指定代理人制度が、行政事件訴訟の遅延の原因になっていると思う。これから弁護士の数も増えるので、弁護士を国ないし、地方公共団体等に被告の代理人として選任していくべきだ。これは弁護士の職域拡大のために言っているわけでない。
 それから、担当の官庁の訟務官が担当すると、何が何でも勝たないとならなくなるが、外部の弁護士だと、少しは客観的に物事が見られるので、指定代理人制度は廃止すべきだ。また、指定代理人はすごい数となっており、経済的な面から見ても、この制度は廃止すべきだ。
 租税に関する事件の調査官制度について、例えば一部認容の場合、計算その他で、調査官が必要だということは分かるが、調査官には、国税庁の職員が行っており、しかも、人事異動のルーチンの一つのポストになっている。確かに、裁判所は事実認定も含め、調査官の判断に従っているわけではないと言っていることは理解できるが、やはり国民の目から見ると、国税庁の担当者が人事異動で調査官として裁判所にいるというのはなかなか納得し難い実状だろう。租税に関する調査官なら、例えば税理士から起用することも可能だし、いくらでも方法はあろう。現在の調査官の人事については改めるべきだ。

2.納税者訴訟制度の導入について
○第13回会合 平成15年2月5日議事概要(水野委員の発言)から抜粋
公金検査訴訟、あるいは国民訴訟、納税者訴訟と呼ばれる、いわゆる違法な公金の支出の検査制度、又は訴訟制度というものは地方自治法には規定があり既に何十年も続いてきているが、国レベルではなく、そういうものが必要だという議論が、これまでこの検討会でも出ていた。
 大阪弁護士会では議論をし、大阪弁護士会としての案を作って公表した。1月20日、大阪弁護士会でシンポジウムを行ったが、新聞報道がされたこともあり、かなりたくさんの市民が参加したが、印象としては非常に関心が高いと思った。今日、いわゆる国民訴訟制度の提言につき説明をさせていただき、議論をしていただければと思う。
今回の提案の第1点だが、会計検査院という独立した機関をもっと機能させる必要がある。そのために国民が会計検査院に対して直接、公金検査の請求をしていくという直接民主主義的な制度を導入するということで、そういう意味あいが法案の第1章の公金検査請求だ。
 会計検査院法35条に会計経理の取扱の審査判定の条文があり、国の会計事務を処理する職員の会計経理の取扱に関し、審査の要求があつたときは審査をする、その請求は利害関係人から、という要件が被っている。つまり利害関係人からの審査の要求があった場合、しかも国の会計事務を処理する職員の会計処理の取扱に関しての審査の要求、という規定しかない。だから公金検査の請求の制度を設けることにより、会計検査院の機能を強化、活性化させる。
 第2点は、それでもダメな場合には次の手段として、裁判所に対して、国の公金支出が違法かどうか、ということの確認を求めて、出訴する道をひらく、ということだ。
 この検討会のテーマは、司法の行政に対するチェック機能の強化であって行政事件訴訟法の改正だけに止まるものではなく、また、行政訴訟と大いに絡む問題だから、この検討会でも是非取り上げて頂きたい。
(注)行政訴訟検討会メンバー(11人)座長 塩野宏東亜大学教授(元東京大学教授)
(参照 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/05gyouseisosyou.html