タ イ
Thailand


は じ め に

  視察日程の通り、9月15日夕方バンコク空港に到着、日曜日のこととて、幸いタイ国名物の道路渋滞もたいしたことなく、ホテルに到着した。

翌9月16日は月曜日であるため、渋滞を予想して2班に分かれて視察に出かけることとなった。A班、ジェトロバンコクセンターへ、B班、東京三菱銀行へ。

それぞれの場所での、税務・会計の専門家によるレクチャーあるいは質疑は資料の通りであるが、重複することを敢えて厭わずに記載した。

1.税務上の進出企業に対する優遇政策は、現状では地域別に相当格差のある政策が採られていること。従って事前に慎重な調査を要すること。

2.一般に税務・会計に習熟した人々が少なく、決算や税務上の諸手続きについては、若干の曖昧さがあり、一方我々が考えている以上の労苦を要すること。

3.1992年に導入されたVATについては、企業の負担に拘わらず、非常に厳格な処理が要請されており、記帳、申告納税(毎月)に、各企業や関係者は相当の犠牲を払っているようである。しかしVATに必要なインボイス等の整備によって、記帳水準がかなり向上している模様で、我が国の制度と比べて、大変興味深く感じた。

夕刻より日本企業の現地法人と関係者の方の、貴重な経験談、ご意見を聞くことができた。

翌9月17日早朝より飛行場に向かい、次の視察国マレーシアのクアラルンプールへ出発した。

 

T 自 然 と 社 会

 

1 地理

国土面積は約513,000平方Kmで日本の約1.4倍に当たり、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国内ではインドネシアに次いで第二番目に広い国土を有している。首都はバンコク。タイのほぼ中心に位置し、首都圏面積は約1,600平方Km(東京都の約4分の3)である。気候は国土の大部分が熱帯モンスーン気候で、雨季(5〜10月)と乾季(11〜4月)に大別され年間平均温度は28度程度で、高温多湿であり一年中日本の7、8月頃の気候と考えてよい。

2 人口

約5千9百万人である。首都バンコクの人口は約560万人で総人口の1割近く、過密地帯となっている。

3 通貨

バーツ(Bht)=約4.3円(1996年9月現在)

4 教育

学校教育制度は、就学前教育(1〜3年)、初等教育(6年)、中等教育(中学校、高等学校6年)、高等教育(2〜6年)である。義務教育としては現在は初等教育6年であるが、中等教育を含め9年を考えている。高等学校及び高等教育としての職業教育制度があり、工業、商業を主とした職業専門教育が行われている。就学率は初等義務教育92.58%、中等教育前期

46.82%、中等教育後期25.29%、大学教育9.40%であり、識字率は93%と高い水準にある。

5 宗教

憲法により信仰の自由が保障されているが、国民の大部分95%は仏教徒で(小乗仏教、僧侶約30万人、寺院約3万4千)、回教徒は約4%、キリスト教徒は約0.6%となっている。

6 日タイの経済関係

江戸時代初期、日本からは朱印船が往来し、日本町が形成され、日本人町の長となった山田長政の話がある。第二次世界大戦後、1974年の田中総理大臣の訪タイ時には、日本の急激な進出から、反日デモが起こるなど、国民レベルで摩擦が広がったこともあるが、今日では日本の投資がタイの経済成長、産業高度化の原動力であるとの認識が定着しつつあり、日本からの投資を評価、歓迎する向きが多い。しかしながら、日タイ貿易のアンバランス(タイ側の大幅な赤字)が政治的に二国間の摩擦へと転嫁されることのないよう、日本側が協力することが肝要である。

 

U 政 治

 

1 政治体制の歴史

タイの政治体制の歴史は1932年の、立憲革命までの専制君主体制、それに続く軍事官僚体制、そして1973年の学生革命に端を発した軍部、政党それに調停者としての国王の3者が権力を分有する体制で、その3者の権力体制が現在まで続いている。

70年代のタイはクーデターと総選挙を繰り返したが80年に入り登場したプレム首相がこの3者の権力バランスをうまくとり8年以上にわたる長期政権を樹立し、現在の経済の発展の基礎を築いた。しかし91年5月に起きた民主化、反政府デモに対する責任をとってスチンダー首相が辞任し、それ以降連立内閣がめまぐるしく成立している。

2 国家組織

タイは議会制をとる立憲君主制であり、1932年以来、タイの国王は現在の国王プミポン・アドゥンラヤデート大王(ラーマ9世)のもとに、国民主権、国王元首、三権分立制、二院制国会、選挙制と西欧的な制度を採用している。

元首である国王の権限はかなり強く、国王は国会で成立した全ての法律に署名し、また国王は国軍の総帥であり、仏教の擁護者である。裁判所の判決も国王の名のもとになされる。

王室への批判や侮辱は不敬罪に問われるほど、タイの人々は王室に対して強い敬愛の念を持っている。国王賛歌や国旗、国王が掲載された紙幣にも敬意を払うなど徹底している。

行政組織としては、一貫した中央集権体制で、この体制は文武の高級公務員の官僚により支えられ、地方行政の末端まで内務大臣の決裁を仰ぐというほど徹底している。その統治方法は領域内をモントン→ムアン→アムプ→タムボン→ムーバーンに序列化し、全国規模の権力ピラミッドを構築し中央集権化を行っている。しかし、実態はもっと複雑で、中央政府の出先機関以外に自治体制度が存在しており、これらが複雑にからみあって、地方における行政制度をタイ人でさえまともに理解している人は少ないらしい。

こうした体制は官僚優位になり、公務員の国民に対する姿勢は「国民の主人」となりがちである。こうなれば、官僚は、自分達が握る許認可権を求めて接近する経済界と癒着しがちになる。

このような官僚の代表が軍部であった。そして1932年以降約半世紀の間、タイ政治を完全に牛耳ってきた。しかし、1973年以降数度にわたる政変、クーデター等により民主勢力への流れと、急激な経済力の発展に伴い、官僚の後退と経済界の台頭のきざしが読み取れる。

3 政治組織

現在、国会は二院制で、上院と人民代表院(下院)より成り、上院は240名の国王の任命議員であり、任期は6年で2年毎に3分の1が改選される。また下院は391名の民選議員で構成され、任期は4年である。

内閣は1名の首相と48名以内の大臣からなり、14の中央省庁を管轄する。1992年9月の改正により、首相は人民代表議員に限られるようになったが、それまでは軍人をはじめとして非国会議員が選ばれる場合が多かった。しかし最高権力者の首相の選出方法は国会の投票による選出という方法をとらずに、人民代表院議長がその名を国王に奉上するとされている。

また、憲法により人民代表院議員立候補資格者は必ずどこかの政党に所属していなければならない。これは、タイが政治活動の基本を政党政治においているからである。

75名の県知事は内務省から派遣されており、バンコク特別区のみ選挙が行われている。最近、

県知事の公選制が議論されているが、前述のごとく全てが中央集権を前提にしている行政制度のため、実際には難しい。全てが中央集権を前提にした現在の地方行政制度そのものの大幅な変革を断行しなければ、実際には県行政が機能しないからである。

地方の経済界にはいろいろなグループが存在するが、最近政治的に注目される組織は商工会議所である。商工会議所と県当局との間に「県経済問題改善官民合同委員会」と称する定期協議機関が設置され、経済界の要求が政治へとインプットされるシステムができあがりつつある。

タイ社会では一般に集団が機能しにくく「親分・子分関係」が成立しやすい。そもそも政党などの組織は政治理念や信条または政策が支えているのであるが、核心は政治の目的そのものが権益の獲得になってくる場合も多い。すなわち、政治活動の核心は権益の獲得につながってくるのである。いずこの国でも、選挙はもちろんのこと、政治活動とりわけ政界で力を持つためにはカネが必要になってくる。そのため結構選挙違反があるらしい。1995年の総選挙による各政党の勢力数は次のとおりである。

 
タイ国民党 92 民主党 86
新希望党 57 国家発展党 53
道義党 23 自由正義党 11
社会行動党 22 統一党
ナムタイ党 18
タイ人民党 18
大衆党
合計 391

 

V 経 済

 

1 経済機構

タイのGDPに占める農林水産業の割合は80年に20.2%であったが、92年には11.9%とそのシェアは半減した。一方、鉱工業、建設業のGDPに占める割合は80年には23.8%、4.9%であったものが、92年にはそれぞれ29.8%、6.6%へと増加している。タイの工業化は54年の産業奨励法の制定により弾みがつき、初期は輸入代替的な産業育成が図られたが、徐々に輸出指向型産業へ力点が置かれ、工業化が進展した。総輸出に占める工業製品のシェ

アは86年には50%を超え、現在も外国からの製造業に対する直接投資は増大しており、工業の高度化は進むものとみられる。

タイは85〜94年の10年間におけるGDP年平均成長率が8.2%という世界第1位の経済成長をとげている。タイ経済は80年代後半には前年比10%以上を超える高度成長期を経て、

90年代には調整期に入ったといわれているが、実質GDP成長率は、93年8.2%増、94年8.5%増、95年8.6%増を記録している。

今後のタイ経済、インフレを除いたマクロの経済は、おおむね良好に推移すると見込まれている。タイのインフレ率は95年5.8%、96年5.5%(推定)であるが、インフレは賃上げの加速、国際競争力の低下など各方面にマイナスの影響をもたらすので、タイの持続的な経済成長達成のためにはその抑制がカギとなろう。

2 経済政策

タイは61年に第1次経済開発計画をスタートさせてから、30年余にわたって経済計画を進めてきた。これまで7回にわたるタイの開発計画の特徴は、国の強権をもって実施されるという性格のものでなく、行政府のテクノクラートによる経済全体の方向性を明らかにするという意図が強い。

91年10月開始の第7次経済社会開発5ヵ年計画では、(1)バランスのとれた安定的経済成長、(2)所得・地域格差是正、(3)人的資源、生活の質及び環境の開発の3つの基本目標を掲げている。これまでの計画が、概して量的な経済拡大とそのための構造調整を主眼としてきたのに対し、第7次計画では質的側面を重要視するとともに開放経済による国際化時代への対応を明確に打ち出している点に特徴がある。「東南アジア地域での金融・貿易センターを目指す」の表現にみられるように、ASEANのエコノミックリーダーを目指す意図がうかがわれる。

3 財政

租税構造は、個人所得税、法人税の直接税の比重が低く、事業税、消費税、関税など間接税の割合が高い。93年度は直接税31.2%に対し間接税68.8%であった。これは、人口の7割を占める農村人口の所得が一般的に低水準であり、中間所得層が薄いことが原因である。

歳出の内訳をみると、経済関係費、教育費、国防費がそれぞれ20%程度で安定しているが、80年代に債務返済費の割合が増大して85年からは20%を超えるほどになった。この主因は国防費と公営企業の経営不振である。全体としてみた場合、第1次石油危機の前後を除き、歳出規模はGDPの18〜19%程度、政府経常収入はGDPの20%強で推移している。

95年度の予算規模は、前年度比14%増の7,150億バーツ(1バーツ約4.3円)となっている。95年度財政支出の重点施策は、(1)地方開発、(2)教育及び生活の質の改善、(3)

天然資源開発、(4)国際競争力強化、(5)交通渋滞対策の5項目があげられている。このように95年度の財政支出では景気に中立を保ちつつ、国内の地域格差・所得格差の是正策を中心に、

タイ経済・社会の質的充実を重視した予算となっている。

4 関税制度

関税に関する基本法は、関税法と関税定率法である。88年1月からHS(Harmonized

System)を導入してからは、"Customs Tariff and Business Tax"が関税局から発行されている。

品目の大部分が税率25%〜60%の範囲で適用されている。

輸出関税は米、屑鉄、原皮、ゴム、木材、生糸、魚粉の7品目に課せられている。最近は、国内産業、特に中小企業の競争力強化を図るため、生産財や原材料の輸入関税引下げがしばしば行われてきている。

関税の課税方法は原則として従価方式であるが、酒類等については従量方式も併用されている。

従価・従量が併記の場合は関税収入の多い方を適用する。従価税は原則として卸売現金価格(輸入者が一定の手数料を加えて国内市場へ卸す価格)に課税される。実際には、税関申告の際のインボイスがエビデンスとなり、CIF価格が課税標準となる。

 

W 税 制

 

1 法人税

法人企業がタイで活動している場合は、法人所得税を納入しなければならない。税率は純益の30%。タイ国法の下で登記された会社はすべて、歳入法の規定による課税の対象となる。タイ国内で未登録または非居住の外国企業は、タイ国内源泉の収入に対してのみ課税される。通常の事業経費や償却費(5〜20%の率)は総収入からの控除が認められる。純損失は最大連続5ヶ年間にわたり繰り越すことができる。会社間の配当は、受取配当の50%に対して非課税となる。

持ち株会社やタイ証券取引所(SET)上場会社の場合には、配当は全額非課税である。

法人税は半年ごとに支払い、6か月の会計期間の終わりから150日以内に納入することになっ

ている。また雇用者は従業員の所得税を源泉徴収する義務を負っている。

2 付加価値税

付加価値税(VAT)の制度は92年1月から発効し、従来の事業税制度に大部分とって代わっ

た。従来の制度は非能率な重複を招き、脱税の温床になっている、という批判があった。新税制の下では、生産過程のあらゆる段階で付加された価値に7%の税率が適用される。付加価値税は月毎に納入する必要があり、その税額は次のようにして計算される。

(産出課税額)−(投入課税額)=支払税額

産出課税額とは、販売に際して業者が購入者から徴収した付加価値税額。投入課税額とは、業者が自社の事業に必要な商品やサービスの販売者に対して支払った税額のことである。この計算結果がプラスならば、業者は手元に残った差額を、毎月の月末から15日以内に歳入局に納付しなければならない。逆に計算結果がマイナスならば、業者は現金で、あるいは翌月に納付すべき税額からの控除の形で還付を受けられる。

輸出や総収入が年間60万バーツに満たない業者及び農産物、家畜または肉、新聞、雑誌、教科書、保健医療サービスの販売・輸入などは免税となっている。

商品、サービスの国内販売による総収入が年間60万バーツを超え、120万バーツ未満の業者は、1.5%の総売上高税か、または普通の付加価値税か、どちらかを選択することができる。

ただし、総売上高税を納付する業者の場合には、製品の顧客や問屋から付加価値税を徴収して総売上高税を相殺することはできない。

3 特定事業税

次の企業に対しては、付加価値税の代わりに3%の特定事業税が課される。(1)商業銀行および類似の企業、(2)金融会社、クレジット会社、(3)不動産の販売、(4)保険会社、(5)証券取引所での売買

4 海外送金時の源泉課税

タイ国内の支店から海外の本社に移転される利益、あるいは移転されると見なされる利益に対して送金時に源泉税が課税される。利益は送金予定額の10%で、送金の日から7日以内に海外企業の送金担当部門が納付しなければならない。

5 個人所得税

居住者、非居住者を問わず、個人がタイ国内で雇用または事業から課税対象収入を得ている場合、あるいはタイ国内に資産を持っている場合には、すべて個人所得税の支払義務がある。これは収入の支払場所がタイ国内か国外かにかかわらない。

所得税は表1の累進表に従って課税される。また1歴年に180日以上タイ国内に居住する個人は、タイ国収入源からの収入に対して所得税が課される。

個人所得税の支払と申告は、所得が発生した年の翌年の3月末までに行わなければならない。

雇用やサービスの実施、あるいは著作権からの収入に対しては、40%の概算控除があるが、この控除は金額にして6万バーツを超えることができない。その他の種類に属する収入には、

10〜85%の概算控除が認められている。しかし一般的には、納税者は法律で定められた収入源からの収入に対し、概算控除を利用するのでなく、経費の明細を費目別に示して申告することができる。

所得控除は、年額にして表2のように認められている。

給与所得控除は総額の40%又は6万バーツのいずれか低い方。税金が追加課税されることも、申告書の提出日から10年以内にありえるが、税務調査の召喚状を発する権限は、申告書提出日から5年間に限定されている。個人が申告書を提出しなかった場合には、提出日から10年以内に課税通知を受けることがある。

 
表1 所得税率 表2 所得控除(単位/バーツ)
純年間所得(バーツ) 税率 納税者本人 30,000
0 - 100,000 5% 配偶者 30,000
100,000 - 500,000 10% 子ども1人につき 15,000
500,000 - 1,000,000 20% 子ども1人につき教育費 2,000
1,000,000 - 4,000,000 30% 納税者夫婦の共済基金への拠出に対し 10,000
> 4,000,001 37% 納税者夫婦の住宅購入割賦購入建築のための融資の利子支払に対し 10,000

 

V 投 資 動 向 ・ 雇 用

 

1 日系企業の投資動向

日本からタイへの投資には3回の波がある。第1の波はニクソン・ショック後の72〜73年、

第2の波は85年9月のプラザ合意後の87〜90年、第3の波は93年以降である。

第1の波では、家電など大手組み立て企業の投資が中心であった。第2の波は中規模企業にまで波及したが、投資件数、金額とも最も大きかった。第3の波は中小の裾野産業にまで投資先が及んでいる。ちょうど、日本がバブル崩壊後の不況で国内市場が低迷していたのに加え、1ドル100円を切る円高で、海外に生産拠点をシフトせざるを得ない状況にあった。また、既進出組み立て企業からの進出要請があった点も見逃せない。こうした中小企業の投資が多いことから、1件当たりの投資金額はそれ程大きくなく、投資額としては第2の波の水準に及んでいない。しかし、94年後半に、冷熱延鋼や石油化学産業に対し投資優遇措置を施すことになったため、今後は大規模投資が日本から期待できる。

日本の95年の総投資額は申請ベースで2,432億バーツで外国からの投資の50%を占め、第1位の投資国となっている。

2 産業・投資政策

タイの投資奨励活動は、30年以上に溯るが、タイ国内の投資を振興するためのインセンティブを付与する権限を有する政府機関であるタイ国投資委員会(BOI)がその活動を行っている。

BOIの投資奨励案件とは、タイの産業の技術力を高めるもの、国内の原材料を利用するもの、基本的なサポーティング産業、外貨を取得するもの、バンコク以外の地方の経済発展に資するもの、インフラの発展に資するもの、天然資源を保存し、かつ環境問題を減少させるものがあげられている。

奨励企業に対しては進出地域により特典が異なる。

(1)第1地域(バンコクなど6県)

原則として法人税の免除、機械輸入関税の軽減はない。ただし、輸出比率80%以上の輸出型産業で工業団地に立地するものは、3年間法人税を免除し、BOI指定の機械輸入関税を半減、輸出比率30%以上の場合は、原材料の輸入関税を1年間免除。

(2)第2地域(第1地域の周辺の10県)

法人税を3年間免除。工業団地に立地の場合は、最長7年間、法人税を免除。BOI指定の機械輸入関税を半減。輸出比率が30%以上の場合、原材料の輸入関税を1年間免除。

(3)第3地域(残りの57県)

法人税を8年間免除。輸出比率30%以上の場合、原材料の輸入関税を5年間免除。BOI指定の機械輸入関税を半減。プロジェクトによっては、法人税免除期間経過後5年間の法人税半減、

水道・電力・輸送経費の10年間にわたる倍額経費計上、建設・設備投資に対する年間純益の

25%割増控除。

総売上額の80%以上を輸出する事業、第3地域に工場が立地する事業、金型・ジグ、高品質鋳鉄等14種の据野産業などについては100%の外資が認められ、また、総売上額の50%以上を輸出する事業は過半数外資が認められている。

3 労働人口、就業構造

タイの人口は、約5,980万人、そのうち労働人口は約3,400万人である。産業別の就業人口をみると、農林水産業が1,900万人で56%を占め、製造業400万人の12%、商業380万人11%、サービス業380万人11%となっている。

タイの労使関係は、賃金、給与、組合運営、服務規定、福利厚生などをめぐる労働争議が多かっ

たが、近年は労働裁判所の設置にみられるように、政府の積極的な取り組みや労使双方の理解の進展などによって、円満に解決するケースが増えてきている。

日系企業では、賃金、福利厚生面とも現地企業を上回る傾向にあり、労務管理への注力もあって深刻な労使紛争は減少してきている。ただ、コミュニケーションの問題、日本人との給与格差などのほか、タイ人の登用問題は常に日系企業にとっての重要問題となっている。

また、中学の就学率47%(日本100%)、高校25%(日本95%)という日本に比べて低い就学率が、高いレベルの技術者や専門家の不足の問題を起こしている。そのためタイ国政府は義務教育を6年から9年に延ばす政策をとっている。

4 賃金動向

タイの最低賃金は年々上昇しており、企業の価格競争力を低下させている。また企業の進出先が1ヵ所に集中することや、生産品目の高度化などにより生産現場における熟練労働者、エンジニア、中間管理職の需要が高まっているが、企業側の需要に労働供給が追いついていない状態である。特殊技能者の人材不足のため、タイ進出企業には大きな問題がクローズアップされており、

政府は人材育成に具体的に乗り出した。地方への進出が急増していることに鑑み、大蔵省は工業団地内に市立学校を設置したり、地方移転を行う大学に対して資金援助を行う方針を打ち出している。日本も経団連の「経団連奨学金制度」や「テクニカル・インスティテュート」の設立、政府レベルでは19次円借款での職業教育短大事業など、人材育成の支援に乗り出している。

表3 全国産業別月額平均賃金(企業規模別単位:バーツ)内務省労働局・労働統計年鑑1993年

表4 最低賃金の推移(日額、単位:バーツ)内務省労働局・労働統計年鑑1993年

表5 タイ国投資委員会の投資奨励のための税恩典一覧

表3,表4,表5はこちらで

(以上文責:近畿会 岡村忠弘、堀 浩司、脇阪説男)

 

参考文献

タイ王国政府総理府投資委員会事務局編「タイへのビジネスガイド」

 世界経済情報サービス編「ARCレポート」

ジェトロ「ビジネスガイド タイ」日本貿易振興会

タイ王国政府総理府投資委員会事務局編「タイ国投資委員会ガイド」