番目のアクセスありがとうございます Released on 11 May 1997

平 成 8 年 度 東 南 ア ジ ア 視 察 報 告 書

タ イ、 マ レ ー シ ア、 ベ ト ナ ム

税 制、 投 資 環 境、 日 本 企 業の進 出 状 況

(1997年3月)

日 本 税 理 士 会 連 合 会

あ い さ つ

 世はまさに、ボーダレス時代のさ中にあり、人、物、カネそして情報が日夜の別なく国境を越えて自由に行き交う当節であります。
私ども税理士の関与先の多くを占める中小企業にあっても事情は同様であります。資本の海外進出、生産拠点の海外移転、商取引の国際的広がりなどがその例であり、それも年を追う毎に激増しつつあります。

 この度、当日本税理士会連合会(日税連)が東南アジア3カ国(タイ、マレーシア、ベトナム)に派遣した視察団のテーマとして、@当該国の外国からの投資環境A日本企業に対する当該国の受け入れ態勢と既に進出している日本企業の事業展開の実情B当該国の外国法人に対する租税制度の現状と今後の動向などがあげられておりますが、これらはいずれもこうした現状認識のうえに立って設定されたものであります。中小企業の良きパートナーをもって任ずる私ども税理士に必要とされる海外情報の多くはまさしくこうした点に集約されているものと想到されます。

 1992年11月に日税連主導のもとに設立されたアジア・オセアニアタックスコンサルタント協会(AOTCA)の事業目的のひとつに「税務及び経済に関する情報、経験及び知識の交流促進のための便宜提供」がうたわれていますが、その思潮は日税連のこうした視点と軌を同じくするものであります。設立後いまだ日が浅いこともあり、この分野での具体的成果は必ずしも十分とはいえず、今後の活動に託されているところであります。

 この報告書は、この意味でも当日税連及びAOTCAの国際関連事業の推進に大きなインセンティブになると同時に全国の税理士会会員の今後の業務展開に極めて有為な資料を提供することとなると存じます。会員各位のご活用を期待するものであります。
 結びに当たり、この報告書を取りまとめた同視察団の弓岡団長(日税連専務理事)をはじめとするメンバーの皆様に深甚の謝意を表すものであります。

1997年3月

 
日本税理士会連合会会長 平 田 公 敏

発刊にあたって

 アジア・太平洋地域における政治がらみの領海水域の批准問題、はたまた軍事面も巻き込みかねない軍備競争が過熱気味である昨今、アセアンを中心とするアジア各国は、信頼関係醸成を目指した他国間対話を積み重ねています。また、一方では、域外関係拡大を図るアセアン諸国と欧州連合(EU)との間に新たな経済同盟関係の構築を進める動きも出てきました。
 このようなボーダーレス時代を迎え、東南アジア諸国は、持続的な経済発展のため、基幹産業を裾野から支えるサポーティングインダストリーの誘致を積極的に推進してきました。同時に、日本企業の海外進出は、1980年代の急激な円高を契機に、それまでの大企業に限られていたものが中小企業にまで及ぶに至りました。1990年代に入ってからは、投資環境も著しく変化し、中国やベトナムが世界の注目を集める等、アジアNIESからアセアン諸国へと投資が移動を始めており、経済の国際化の波は税理士の業務にも少なからず影響を及ぼし始めております。

そこで、本視察団は、日本企業の進出が特に多いタイ、マレーシア、ベトナムの3ヶ国を訪れその実情を視察するとともに、それぞれの国の税制を中心とする投資環境を調査し、会員の業務遂行に有益な情報を提供することを目的といたしました。さらに、視察のテーマを@各国の投資環境、A日本企業の進出状況とその問題点、B外国法人に対する税制の最新動向の3点としたうえで事前に情報収集を行い、これら予備知識に基づき、11ヶ所に及ぶ訪問先毎に各所の特徴に沿った調査項目を設定し現地での視察に当たりました。

本報告書は、視察の成果をとりまとめたものであり、併せて視察の記録としてのレポート、並びに現地で入手した関連資料を掲載しております。少しでも会員の皆様の参考となれば幸いです。

この旅行を通じ、自らの見聞を深めることができたのはもとより、団員相互の心の触れ合いが得られたことは大きな収穫でありました。視察団員には、8日間の旅行中、ハードスケジュールを精力的にこなし全員無事に帰国できましたことを深謝しております。

末筆ながら、事前の準備会、本報告書作成のための執筆、編集にあたりまして多大なご協力をいただきました団員の皆様に厚くお礼申し上げます。

1997年3月


平成8年度東南アジア税制視察団

団長 弓 岡 隆 巳

1 視察の目的と概要

日本税理士会連合会(以下「日税連」)は、国際委員会の発意により、国際交流事業の一環として、1996年9月15日から9月22日までの8日間の日程で東南アジア3ヶ国へ視察団を派遣した。

視察の目的は、各国の投資環境と進出した日本企業の実情について調査し、関連する税制について情報収集することであった。視察団は、この目的に基づき、@各国の投資環境、A日本企業の進出状況とその問題点、B外国法人に対する税制の最新動向の3項目を視察の主要テーマとし、各訪問先別に質問項目を設定して視察にあたった。

視察団は、弓岡隆巳団長以下20名及び日税連事務局員2名で構成された。
訪問先は別掲のとおりである。

2 視察日程

渡航期間:1996年9月15日(日)〜9月22日(日) 8日間
日 程:
9月16日(月) 10:00〜12:00
 A班 ジェトロ・バンコクセンター訪問(バンコク)
 B班 東京三菱銀行バンコク支店訪問(バンコク)
9月16日(月) 18:00〜20:00
 関西フェルト(タイランド)社長との懇談(バンコク)
9月17日(火) 19:00〜21:00
 ジェトロ・クアラルンプールセンター駐在員との懇談(クアラルンプール)
9月18日(水) 10:00〜12:00
 マレーシア租税協会役員とのミーティング/マレーシア内国歳入庁幹部とのミーティング(クアラルンプール)
9月18日(水) 14:00〜16:00
 アーサー&アンダーセン会計事務所によるセミナー(クアラルンプール)
9月19日(木) 14:00〜16:00
 ホーチミン経済大学(HMC University of Economics)訪問(ホーチミン)
9月20日(金) 9:30〜10:30
 ベトナム商工会議所訪問(ホーチミン)
9月20日(金) 11:00〜12:00
 ベトナム計画投資省訪問(ホーチミン)
9月20日(金) 14:00〜15:30
 WINE FOOD Co.訪問(ホーチミン)
9月20日(金) 18:00〜20:00
 さくら銀行ホーチミン駐在員事務所長との懇談(ホーチミン)

3 視察団参加者
団 長 弓 岡 隆 巳(近 畿) 副 団 長 鈴 木 保(東 京)
事務局長 植 松 省 自(東京地方) 団 員 犬 飼 泉(東 京)
団 員 井 上 徹 二(東 京) " 河 本 明(東 京)
" 高見沢 啓助(東 京) " 真 山 泰 男(東 京)
" 三 浦 繁(東 京) " 伊 藤 雄 二(東京地方)
" 上 田 輝 夫(東京地方) " 公 納 幸 政(東京地方)
" 長谷川 博(東京地方) " 岡 村 忠 弘(近 畿)
" 奥 田 実(近 畿) " 堀 浩 司(近 畿)
" 脇 阪 説 男(近 畿) " 鈴 木 宗 夫(東 北)
" 池 田 眞 敏(九州北部) " 福 田 健(九州北部)
" 金 田 好 史(事 務 局) " 柏 木 純 子(事 務 局)

4 訪問先と主な応対者
1) ジェトロ・バンコクセンター 林 哲三郎 次長、濱野 謙 介 公認会計士
2) 東京三菱銀行バンコク支店 羽 田 清 副支店長
3) BTMホールディング(タイランド) 高 倉 尚 己 社長
4) 関西フェルト(タイランド) 渕 祐 示社長
5) ジェトロ・クアラルンプールセンター 鈴 木 厚 次長、松 崎 八重子 課長
6) マレーシア租税協会 アーマド・ムスタファ・ガザリ会長
7) マレーシア内国歳入庁 タン・コク・キー課税局次長
8) アーサー&アンダーセン会計事務所 ジャニス・ウォン日本ビジネス部長
9) ホーチミン経済大学 グェン・サン・ソン副学長
10) ベトナム商工会議所 グェン・デュ・リー国際部長
11) ベトナム計画投資省 グェン・バン・ナム外国投資局長
12) WINE FOODCo. 山 本 誠 治 社長
13) さくら銀行ホーチミン駐在員事務所 大 木 守 所長



訪問3ヶ国の概況と日本の比較表 (文責:東京地方会 植松省自)

参考文献
 
矢野恒太記念会編「'96/97世界国勢図会」国勢社
ジェトロ「Nippon 1996 Business Fact and Figures」
ジェトロ「アジア主要都市・地域の投資関連コスト比較(1996年2月)」
ジェトロ・アジア太平洋州課「タイ概況」「マレーシア概況」「ベトナム概況」
経済企画庁編「アジア経済1996」
経済企画庁編「平成8年度版
経済白書」大蔵省印刷局