韓国における「租税審判院」創設関連資料
1. 租税審判院の創設経緯に関する資料
(1) 国務総理室の報道資料T(2008.4.11)
租税審判院扁額式開催
−国税・地方税の不服手続きの中立性高める−
○ 新しい政府の出帆と共に発足した「租税審判院」は、去る10日、趙重杓国務総理室長、許宗九租税審判院長が臨席した中、扁額式を行った。
○ 国税庁・自治団体など租税賦課機関とは独立した租税不服審判機関として、租税審判院が発足されるにつれ、租税不服手続きにおける独立性・中立性が高まることと期待される。
○ これからの租税審判院は、審判院の中に分野別推進チームを構成し、関係機関・団体らの意見を収斂し、統合租税専門権利救済機関として発展できるよう租税審判行政の改革を推進する計画である。
※ 審判業務遂行における独立性・中立性の確保、仕事のやり方の改善、審判サービスの改善、職員の能力向上など
※ 参考:租税審判院の設立経緯及び意義
<参考> 租税審判院の設立経緯及び意義
○ 設立の経緯
・ 従来、国税審判請求については旧財政経済府の国税審判院が、地方税に関する審査請求は旧行政自治府の地方税審議委員会が処理することによって、租税不服の手続きが二元化された。
・ 2008.2.29国税基本法及び地方税の改正に伴い、国税審判院と地方税審議委員会を統合し、国務総理の所属として「租税審判院」を設立。
租税審判院の概要
◇ 組織 : 6個の審判部(国税5、地方税1)、一つの行政室、12個の調査官
◇ 人員 : 院長一人、審判官20人(常任6、非常任14)、行政室長一人
調査官12人、職員88人
◇ 年間の租税不服事件処理の予想件数 : 7,000件以内
※ 2007年における従来機関の処理件数 : 総6,374件 (内国税5,363件、関税216件、地方税795件)
○ 設立の意義
・ 租税行政の担当部署とは独立した機関として租税審判院が設立されることによって、審判決定の独立性・中立性を確保
・ 租税賦課処分に対する不服手続きを統合・一元化することによって、権利救済行政の効率性を増大
・ 地方税の審査請求を審判請求を格上げし、なおかつ準司法的な審理手続きを導入することによって、納税者の権利救済機能を強化
(2) 国務総理室の報道資料U(2008.8.22)
租税審判決定における独立性・公正性・透明性などを高めるための
租税審判行政の改編方向
−会議資料の事前閲覧制、審判請求人の意見陳述拡大等によって、租税審判の決定における独立性と公正性が大幅に改善される−
国務総理所属の租税審判院(院長:許宗九)は、租税関連機関及び団体の意見収斂と「租税審判行政協議会(税務士会、弁護士会、学界などにて構成)」の審議を経て、
○ 審判官会議資料の事前閲覧制、審判請求人の審判官会議における意見陳述の拡大、立証責任の合理的な配分、地方・現場調査の活性化など、独立性・公正性・透明性の提高及び納税者の権益保護のための租税審判行政の改編を推進する一方、
○ 各税法に散在している租税審判関連規定を統合し、今回の租税審判行政の改編方向が反映された別途の法律(仮称"租税審判法")の制定を推進することとした。
今回の租税審判行政の改編の主な内容としては、
○ 審判業務遂行における中立性・公正性・透明性を高めるため
− 審判官会議の資料を請求人と課税官庁に閲覧させ、各々の主張と意見、事実関係の調査などが十分に反映されているか確認できるようにし、追加の意見がある場合は、これを反映させるよう審判官会議資料の事前閲覧制度を導入し、
− 理解関係のある第三者(例えば、名義貸しを主張する事件における実の事業者)なども審判官会議に臨席し、自己の意見が陳述できるよう改善し、
− 審判の決定過程において課税官庁の課税根拠の不備要否を優先的に審査し、請求人と課税官庁の立証がすべて不十分である場合は、立証責任を合理的に配分し、請求人には有利であるが直接の提出が困難な金融資料を審判院が収集するなど直権審理を強化することとした。
○ 納税者権益の実質的な保護と審判サービスの強化のためには、
−臨場確認の必要性が高い審判請求事件(例えば、8年自己耕作による譲渡所得税の減免対象であるか否かの要否など)に対しては、地方現場を直接確認し審判決定において反映し、
− 審判請求の予定者に審判請求書の作成方法及び審判請求の処理手続きなどに対し、詳しい相談サービスを提供し、
− 審判院のホームページに審判請求書の作成要領、主題別決定例の検索機能などを新設し、小額の審判請求人が直接審判請求をするのに不便さがないよう支援する計画である。
○ 職員の専門性を高め審判力量を強化するため、
− 勤務を始める前に朝の時間を活用し、既に5月から始めていた税法・会計学・立証論などに対する職員職務教育を今後も持続的に実施し、租税関連部署との人事交流を活発に推進することとした。
○ また、関係部署の協議を経て、国税基本法・地方税法・関税法などに散在している租税関連審判規定を統合し、租税審判に関する別途の法律(仮称"租税審判院法")を制定することによって、独立的な審判体系を構築する一方、納税者自らが審判請求に関する法令規定を気軽に探して確認できるようとする計画である。
租税審判院は、今回の審判行政の改編方向のうち、行政事項については早いうちに施行させ、法律の改正事項については今年の下半期中、立法化過程を経て来年から施行することとした。
(3) 国務総理室の報道資料V(2008.9.16)
「租税審判法」の制定法律案の立法予告
○ 国務総理室は、国税基本法・関税法・地方税法に散在している租税審判に関する事項及び手続きを統合しながら、租税審判院の設置根拠、審判担当公務員の公正・中立・秘密維持義務などを定める「租税審判法の制定法律案」を、9月16日立法予告した。
○ 去る、2月29日審判決定の中立性を高めるため国務総理所属として、租税審判院が新設されたが、
・ 政府組織改編の一環として、急いで他の政府組織と同時に推進する過程で、内国税に関する法律である国税基本法において、関税・地方税審判請求まで担当するという租税審判院の設立根拠を規定したことや、審判請求の手続きなども各税法別に規定していることなどについて、この間、法律体系の不適合という指摘が提起されつつあった。
※ 08年2月、租税審判院の新設と関連した国税基本法改正案を、国会の財政経済委員会が審査する際、専門委員の検討報告書で"内国税に関する法律である国税基本法で、関税・地方税を含めた租税審判院の設置根拠を定め、各税法において関連事項を規定することは、法律体系上不適合と指摘しながら、「租税審判法」の制定の必要性を提起した。
○ 今回の法律案の制定によって、審判院の設置根拠と各法律に散在している租税審判に関する事項及び手続きを法律体系に合わせ統合規定し、国民が租税審判手続きを前より分かりやすくなり、
・ 租税審判決定の独立性・中立性を高める共に、租税審判院が国民の権益救済機関として、その役割を遂行するのに寄与することと期待される。
○ 「租税審判法の制定法律(案)」の主な内容は、次の通りである。
@ 租税審判院の設置根拠を、現在は国税基本法にて規定されているが、この法律にて規定する。
−現況の通り「国務総理の所属機関」として設置
A 国税基本法・関税法・地方税法に散在している租税審判関連事項をこの法律にて統合・一元化
−今度は、現行国税基本法・関税法・地方税法に規定されている租税審判関連の規定の大部分をそのまま収容することによって、法律の制定による納税者の困難を防ぐ
※(例)租税審判院の組織構成・運営、審判請求の調査・審理手続きなど
B 審判担当公務員の公正・中立義務、秘密維持義務などを新設
−審判の審理・決定において租税審判院の所属公務員及び非常任審判官の遵守義務を規定
C 不合理な審判関連租税法令について、租税審判院長が関係行政機関に改正の要請が可能
○ 法律(案)は、9月23日まで立法予告し。法制処における審査と国務会議を経て定期国会に上程される予定である。
(韓国・李信愛税務士の解説)
本書類を翻訳するに当たり、審判院に尋ねたら、立法予告案は全く進められていない。当分の間は進める予定もないとの返事があった。その理由については、審判院では分からないとのこと。
ただし、9月18日の「租税日報」記事によると、租税審判院長の任期を保障する規定があり、しかも、任期3年に1回の連任を認める規定があり、それは租税審判の中立性を保つためという名分があるとしても、他機関の長らの任期と比較すると衡平性を欠くとの指摘がある。また、審判院長が他の行政機関に対する法律の改正要求権を持つという規定をめぐって財務省、行政機関などからの反発があって、議論されていることに鑑みると、審判院長の任期と法律改正要求権をめぐって役所の間にもめていることが伺える。(2009年3月)
租税審判院法(案)の立法予告案
国務総理 広告 第2008−11号
租税審判法を制定するに当たり、国民に広く知らせ、また意見を聞くため
その制定の理由と主な内容を行政手続法国民に意見を第41条の規定により、次のように広告します。
2008年9月16日
国 務 総 理
租税審判法(案)の立法予告
1.制定の理由
政府の組織改編により、国務総理れ所属として租税審判院が新設(08,2.9)されるにつれ、国税基本法・関税法及び地方税法に散らされている租税審判に関する事項及び手続きを、この法にて統合するなど法体系を整備し、その他租税審判過程において表した一部の不備点を補完することによって、租税審判院が国民の権益救済機関としての機能を円満に遂行できるようとするもの。
2. 主な内容
イ. 租税審判法の目的を"公正で中立的な租税審判を通じて国民の権益侵害の救済"と明示
ロ. 国税基本法・関税法及び地方税法に散在された租税審判に関する事項を、この法にて統合・一元化する。 但し、法律制定による納税者の混乱を防ぐため、国税基本法上の組織構成・運営・審判請求調査・審理手続きなどの現行を規定を大部分をそのまま収容
ハ. 審判の審理・決定において租税審判院の所属公務員及び非常任審判官の公正・中立義務、秘密維持義務などを新設
ニ. 租税審判院を現行通り国務総理の所属機関として、この法で設置根拠を設ける
ホ. 不合理的な審判関連租税法令について、租税審判院長が関係行政機関に改正などの要請が出来ることとする。
3. 意見提出
租税審判法の制定案に対する意見がある機関、団体または個人は、2008年9月23日まで次の事項を記載した意見書を国務総理の租税審判院長(参考:租税審判院行政室長、ソウル特別市江南区江南大路435CEMCO良才タワ−7階)に提出して下さい。 その他の詳しい事項については国務総理の租税審判院(電話番号02−2007−6414、FAX02−2007−6583、メールのアドレス
jyna88@pmo.go.kr)にてお問い合わせ願います。
イ. 立法予告の事項に対する項目別意見(賛反の要否とその理由)
ロ. 氏名(法人・団体の場合は、その名称よ代表者の氏名・住所及び電話番号)
ハ. その他必要な事項
4. その他の詳しい内容は、国務総理室ホームーページ(http://pmo.go.kr?お知らせルーム?報道・解明資料欄)をご参照ください。