本年8月3日に全国青年税理士連盟(橋本 和枝会長)の第40回定期総会が韓国ソウルのヒルトンホテルで会員約250名の参加を得て開催されました。これは、韓国税務士考試会(鄭 求政会長)の協力を得て実現したものですが、翌4日には、韓国税務士考試会と全国青年税理士連盟の共催で両国の税理士制度・税務士制度及び納税者の権利制度に関するシンポジュームが行われました。
ここでは、税理士制度と税務士制度の比較した「税理士の使命」の違いと日本ではまだ制定されていないが、韓国の「納税者の権利憲章」について紹介します。
1.税理士制度と税務士制度の「使命」の違い
韓国税務士法 第1条の2(税務士の使命)
税務士は、公共性をもつ税務専門家として納税者の権益を保護し、納税義務の誠実な履行に役立つことを使命とする。
日本税理士法 第1条(税理士の使命)
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
○ 両制度の大きな違いは、韓国の税務士法が「納税者の権益保護」を明確に規定していることであります。
2.韓国の「納税者権利憲章」
韓国では、1996年に国税基本法を改正して新たに「納税者の権利」に関する条項を追加しましたが、この中で「納税者の権利憲章」を制定し告示することが定められております。
本年(1997年)7月1日に「納税者権利憲章」が公布されましたので、その内容を紹介します。
納税者としてあなたの権利は、憲法と法律の定めにより尊重され、保障されます。 このため国家公務員は、納税者が正しい納税義務を信義に基づいて誠実に履行するように、必要な情報と便益を最大限提供しなければならず、納税者の権利が保護され実現できるように最善を尽くして協力する義務があります。
国税庁長 |
○「納税者権利憲章」制定の背景
韓国の納税者権利憲章制定の背景としては、WTO(世界貿易機関)体制及びOECD(経済協力開発機構)加盟後の国際化に対応した国際基準の導入の必要性や税制の環境変化へ対応するために、納税者の権利を国際的レベルにすべく、政府が主導的に納税者権利憲章を制定したものといわれています。
(1997年8月6日 長谷川 博 記)