Last Modified 29 October 1997

ワシントンポスト記事  1997年10月23日(木)

(アルバート・クレンショー記者)

 

下院歳入委員会が内国歳入庁(IRS)改革法案を可決

 

 米国下院歳入委員会は、昨日、IRSの抜本的な改革、エージェンシー(訳者注)との関係における納税者の権利強化などを盛り込んだ法案を可決した。

 

 クリントン政権の承認を受けた本法案は、数ヶ月に及ぶ反対派の動きがあったが一転して火曜日に、33対4の賛成多数で委員会を通過した。ビル・アーチャー(共和党テキサス州)委員長によると、下院での審議は来週早々には始まる見込み。

 

「これは、所得税の歴史始まって以来の大きな分岐点である」とアーチャー委員長は述べた。

 

 IRSの運営組織改革の目玉は、11名から成る監視委員会を創設したことであろう。案によれば、この監視委員会は、エージェンシーの計画立案、組織改革、予算について審査及び承認する権限を有する。行政の特権として、IRS長官は、これまでどおり、大統領の任命とされているが、新長官の任命に際しては、監視委員会は複数の候補者を推薦することができる。

 

 法案は、また、およそ28の新しい納税者保護の条項を創設している。その中には、係争の際これまで納税者にあった立証責任をエージェンシー転換すること、エージェンシーが職務執行を怠ったときには、納税者が損害賠償請求訴訟を提起できること、善良な配偶者が他方の配偶者又は離婚した配偶者から負担した納税義務を免除する手続きを簡略化すること、弁護士−依頼人守秘特権が会計士および納税者の税務代理が認められる者に拡大していること、また、昨日追加された規定では、個々の納税者が税金の支払いのためにIRSから賦課された利息と税金の還付が遅れてなされたときにエージェンシーから支払われた利息の差異を無くする、などがある。

 

 法案の大部分は、下院議員ロブ・ポートマン(共和党オハイオ州)と上院議員ボブ・ケリー(民主党ネブラスカ州)が議長を務める、IRSリストラ委員会が、エージェンシーの問題点を1年以上にわたり検討した結果をまとめた改善案が基本となっている。

 

 財務省は、立証責任の転換および監視委員会を創設に関する条項については、引き続き難色を示している。エドワード・ナイト財務省審議官は、法廷において納税者の主張とIRSの主張がともに正当であるときに、納税者が勝訴することが認められるというならば、法案は受け入れられるであろう、と述べている。しかし、同審議官とその他の財務省幹部によると、納税者の立証責任が免責されると、納税者が取引記録を保存しないことや記録を消滅させるおそれがあると述べている。これに対し、法案を支持する側は、そのようなことが起こるとは考えられないと反論している。

 

(注)米国のIRS改革案には、その機構をエージェンシー(独立行政法人)として進めていくことが伺える。文中、IRSとThe agencyの用語はそのまま訳した。

 

原文出典( http://washingtonpost.com/wp-srv/WPlate/1997-10/23/110l-102397-idx.html

(1997年10月28日 長谷川 博訳)