番目のアクセスありがとうございます Last Modified on 30 July 2002

                       証券税制改正

                     「源泉分離課税」が2002年末で廃止

1.はじめに
 個人投資家を証券市場に呼び込むため、株式譲渡損失の繰り越し控除創設などを盛り込んだ証券関連税制の改正法が平成13年11月26日、臨時国会で成立した。
 長期保有株式の譲渡益を一定の条件の下で非課税にするなどの優遇策が制度改正の柱となっている。ただ、株式譲渡益課税のうち、申告分離方式の税率を引き下げる一方で、簡便で使い慣れた源泉分離課税方式が平成14年12月末で廃止されるなど、個人投資家の市場離れを引き起こしかねない改正も行われており、今後、市場活性化のあり方を含め、さらに工夫、改善が求められる。

2.改正のポイント
(1)緊急投資優遇措置
 個人が、平成13年11月30日から平成14年12月31日までの間に購入した上場株式等を平成17年から平成19年までの3年間に譲渡した場合、その購入額の合計額が1000万円に達するまでの譲渡益については、一定の要件の下、非課税となる。

(2)申告分離課税の見直し(平成15年実施)
@申告分離課税への一本化
源泉分離課税が、平成14年12月31日で廃止され、平成15年1月1日以降は申告分離課税に一本化される。

A申告分離課税の税率の引下げ(対象:上場株式等)
・改 正 前: 26%(国税20%、地方税6%)
・平成15年1月1日以降の売却: 20%(国税15%、地方税5%)

B譲渡損失の繰越控除制度の創設(対象:上場株式等)
・繰越期間:損失が生じた年の翌年以後3年間

C上場株式等に係る取得費の特例の創設(対象:上場株式等)
平成13年9月30日以前に取得した上場株式等を平成15年1月1日から平成22年12月31日までの間に譲渡した場合の特例制度が創設された。
・取得費:平成13年10月1日における価額の80%相当額とすることができる(実際の取得費でも可能)。

(3)長期(1年超)保有上場株式等に係る特例
@暫定税率(平成15年〜平成17年までの3年間の売却)
  対象: 1年超保有上場株式等
  暫定税率:10%(国税7%、地方税3%)

A 100万円特別控除の延長
平成15年3月31日⇒平成17年12月31日まで

3.将来の課題
 今回の改正で、多くの数の個人投資家が納税額ゼロも含め、税制上の恩恵を受けると見られるが、一方で、損失の繰り越し控除のような恒久的な措置と、10%の税率適用制度(3年間)などの時限措置が混在し、納税者が戸惑う可能性がある。
 さらに問題なのは、低税率(譲渡代金の1・05%)で簡便な源泉分離方式が廃止されることだ。約7割が同制度を利用している個人投資家は確定申告を行う必要が生じるため、かえって市場から足が遠のくとの懸念がある。さらに緊急投資優遇措置にも、適用には「非課税適用選択申告書」の提出が義務付けられる。
 このため、金融庁では、証券会社が株式取引の納税実務を代行する制度の創設や、株式だけでなく株式投資信託の収益分配金課税(税率20%)の税率引き下げなどの追加策を要望し、個人投資家のつなぎ止めを図っている。自民党内には今回の改正を不十分だと見て、「源泉分離方式の存続論が来年に再燃する」との見方もあり、議論は今後も続きそうだ。
参考:http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/17/zeisei09.htm

(税理士 長谷川 博 事務所)