番目のアクセスありがとうございます Last Modified on 23 June 2003

                   消費税増税を黙って許していいのか
              
−税収に占める消費税−


                                                         長谷川 博

1.平成15年改正消費税
 平成15年税制改正で消費税の改正がなされ、免税事業者の免税売上が3,000万円から1,000万円に引き下げられた。これにより約90万の個人事業者、約50万社の零細法人が新たに納税者となる。消費税を売上に転嫁できないでいる零細事業者にとって消費税の滞納が想定される。この6月から税務署の予定納税者への説明パンフの配布が行われているが、現場の税務行政にも不安感が漂っている。
また、簡易課税制度適用売上範囲が2億円から5,000万円へと極端に引き下げられ、現在簡易課税を選択している約103万(全課税事業者220万の47.1%)のうち56万事業者が原則課税を強いられることになる。平成9年に簡易課税の仕入れ税額控除を5段階に分けて是正したことの意味がなくなったといえる。
免税制度や簡易課税制度によるいわゆる益税問題は、いわれるほど大きな問題ではなかったはずである。時には損税すら生じていたものである。
 しかしながら、消費税導入当初に小規模事業者の事情を考慮した制度は、強い反対運動もなく改正されたのである。

2.税収に占める消費税
 政府税制調査会がこの6月17日まとめた「中期答申」(少子・高齢社会における税制のあり方)には2007年(平成19年)以降消費税率二桁の増税が描かれている。
 わが国の現在の税率5%の消費税は、税収全体の中で基幹税目として大きな税収割合を占めている。
(1)消費税の税収に占める割合22.7%
平成15年度一般会計予算合計  81兆7891億円
         うち税収予算額   41兆7860億円(51.1%)※
          公債等収入額   40兆0031億円(48.9%)

  ※ 税収予算  41.786兆円
    うち所得税 13.810兆円(33.0%)
       消費税  9.489兆円(22.7%)
       法人税  9.114兆円(21.8%)
       その他  9.373兆円(22.5%)
(資料:http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014.htm参照)

(2)消費税率1%で約2兆円
 消費税率5%で9.489兆円であるから1%当り約2兆円。単純計算すると、消費税率10%で約20兆円、経団連の主張である23%(2025年度)で46兆円となる。
 消費税10%になると所得税を上回る一番の税目となってしまう。仮に税率23%などとなれば所得税など要らなくなるかもしれない。

(3)税収に占める消費税の各国比較(全保団連等資料から各国2002年、日本2003年データ)
・日本22.7%(上記参照) ・イギリス22.3% ・イタリア22.3% ・スウェーデン22.1%
 イギリスでは付加価値税率が18%であっても生活費等非課税のため、実質的には日本の消費税率5%より負担感が少ないといわれている。これらの比較を見ても、日本の現在の消費税率5%は決して低い税率ではない。所得再分配機能が歪められた所得税等の見直しをすることは理解できるが、税収に占める割合から見ても課税の公平性に適わない(逆進性の問題がある)消費税をこれ以上増税する理由は存しない。

3.むすびにかえて
 仮に消費税率を上げ、生活必需品等の非課税等軽減を図る税制を想定すると、納税事業者の計算は複雑になることからインボイス方式(税額票計算)が導入され事業者番号付与による税務管理行政に進んでいく。これまでも政府税調等は納税者番号制の導入を目指していたが、贈与税の相続税清算方式が導入された現在、対象納税者の管理が必要になってくる。今後ますますその導入の動きが加速されていくことが予想される。黙って消費税増税を許してはならない。
(2003年6月記)