税制研究48号(2005年8月)に掲載された「納税者番号制度の問題」の論稿を紹介します。


政府税制調査会の論点整理にみる「納税環境の整備」の問題点


長谷川 博

1.はじめに
 政府税制調査会(基礎問題小委員会)(以下、「税調」という)は、平成17(2005年)年6月21日に「個人所得課税に関する論点整理」(以下、「論点整理」という)を公表した(注1)。本稿では、論点整理の中で示されている「6.納税環境の整備」について取り上げ、その問題点を考察してみたい。
 論点整理の趣旨は、平成18年度において定率減税を廃止するとともに、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を行う必要があるとし、また、税源移譲は所得税・個人住民税双方において税率構造を中心とした抜本的見直しが必要となるという観点から、今後本格化する18年度以降の税制改正の検討を控えて、目指すべき個人所得課税改革のグランドデザインを描いていくに当たっての主な論点を整理するものとなっている。
 論点整理は、基本的に個人所得課税に対する増税色が強いものとなっており、公表時期が東京都議会選挙期間中ということもあって、自民党税制調査会津島雄二会長が税調の増税路線を否定する発言なども行っている。
 しかし、本題の「納税環境の整備」は、これまでも税調が増税路線を示すときに併せてもちだされたテーマでもあり、増税環境の整備という色合いが強い内容を有している。最近では、平成15年6月「少子・高齢社会における税制のあり方」の税調の中間答申、旧くは昭和58年11月「今後の税制のあり方について」の税調答申にも示されている。
 論点整理の中では、納税環境の整備の趣旨として、公正な税務執行にあたって、所得補足に関し国民の期待が大きくなること、また、IT化、アウトソーシング化による内部事務の見直しや調査事務の一層の効率化を継続し、適正な税務執行に役立つ見直しを行っていくという観点から、@納税者番号制度、A記録及び記帳に基づく申告制度、B立証責任、C源泉徴収・年末調整、D公示制 度、E罰則の6項目が挙げられている。しかし、これらは税務行政手続のあり方に関する課題でもある。
 本稿では、納税環境の整備という税制上の法的意義すなわち税務行政手続の整備という観点から、税調のいう納税環境の整備や税務行政のあり方の問題を指摘してみたい。

2.納税環境の整備の意義と税務行政手続との関係
 納税環境の整備または改善は、申告納税制度の定着と課税要件事実の的確な把握のために必要不可欠とされており、制度上の手当て(青色申告、帳簿書類の備付け、付帯税、推計課税、質問・検査、租税罰則、各種の情報申告及び法定資料の備付け、各種の届出、申告書の公示など)や、国民の納税意識の向上、租税職員の意識の近代化、租税に関する教育の充実、さらには、納税者の代理人としての税理士の制度や納税者の権利保護制度も含む税務行政手続に関する概念として広く捉えることができる(注2)。
 このように納税環境の整備や改善というためには、税務執行手続きの利便性や効率性という側面ばかりではなく、納税者の税務行政手続における権利保護制度という側面が重視されなければならものである。
しかし、これまでの税調の指摘する納税環境の整備論は、納税者番号制度や立証責任の納税者への転換など税務執行の効率性・利便性だけが目立っており、例えば、税務調査手続きの事前通知や課税処分前の弁明の機会の提供など納税者の権利保護制度などについては主張されてこなかった。すなわち、税調や税務当局が適正な税務執行という場合、税務行政の適正手続きから要請される、納税者に対する告知・聴聞手続きなどの制度的保障という側面が欠如してきていることは明らかである。
 以下、本稿では、主に@納税者番号制度の問題、A記録及び記帳に基づく申告制度、B立証責任の納税者への転換を取り上げ、税調の納税環境の整備論における納税者の税務行政手続きの権利保護制度論の欠如について指摘し、納税者の権利保護制度の必要性について論及してみたい。

3.納税者番号制度の問題
 この問題について、筆者はすでに、本誌「税制研究47号(2005年1月)」で、「平成17年度の税制改正に関する答申」(平成16年の答申)に関し、「政府税制調査会答申と納税者番号制度の問題」というテーマで、税調の納税者番号制度の議論について批判的な検討を行なった。
本稿では、論点整理で提出された論点も踏まえて、あらためて税調の納税者番号制度の問題点に論及しておきたい。
(1)論点1 金融所得課税一体化として損益通算の適用を受けるためには、申告書の内容と支払調書の内容とのマッチングには金融番号(納税者番号)の導入が必要である。
 論点整理の前、昨年(2004年)6月15日に税調の金融小委員会は、「金融所得課税の一体化についての基本的考え方」(注3)の中で納税者番号制度の必要性について公表している。すなわち、利子・配当・株式譲渡等の金融所得課税について、申告分離課税に一元化し、上場株式等の譲渡損益の相殺・損益通算を認めることにより所得税額が圧縮でき、株式などリスク資産への投資促進が期待できる。そのためには、課税庁が損益通算の申告をチェックする場合に納税者番号によるマッチングが必要であると理由付けしている。この場合、納税者番号といわずに「金融番号」として論じているが、納税者番号制度であることは間違いない。
税調が納税者番号制度の導入を検討していることは、これまでの税調答申の経緯を見ても理解できるが(注4)、昨年の答申でその導入時期を見送ったのは「金融機関のシステム開発に時間が必要」というのが理由とされている(注5)。
 しかし、この税調の論点に対しては、次のような批判が可能である。すなわち、金融所得課税の一体化は、現行税制で十分に対応できる(注6)。
 現在、金融機関で預金口座を開設する場合、本人確認制度が厳しく運用されており、一定額以上の預金引き出しに際しても運用されている。有価証券の譲渡益課税についても、平成15年(2003年)度から特定口座の開設時に本人確認制度が導入され、取引名義の真正さのマッチングは担保されている。
 有価証券の譲渡損益申告について、投資家は一般口座か特定口座か選択する仕組みになっており、一般の口座の場合、株式売買報告書で損益を把握し、有価証券譲渡所得内部で損益通算を行い(3年間の損失繰越制度がある)、比較的簡単に申告することができる。特定口座の利用者の場合には、源泉徴収制度による申告不要制度や譲渡損の繰越控除申告の選択制度で、その損益の正確性は担保されている。
 生命保険金の満期支払いについても、支払者からの法定調書で申告の要否が判定でき、課税庁もマッチングができている。
 預金利子所得や配当金の支払い受け取りについても、満期時の計算書等、配当支払調書等で所得額や源泉徴収税額が把握でき、金融所得内部での損益通算申告について特に支障があるとは思われない。
 現行法上、違法に所得申告をするものに対しても、法定調書等によりかなりの確率で所得補足が行われているとみることができる。納税者番号制度を導入して徴税コストの引き下げ効果を図るとする見解もあるが(注7)、人員削減等どの程度の効果があるのか理由付けが不明である。導入コストやランニングコスト等の問題を論ずることなしに、納税者番号制度の有効性を論ずることは大きな問題である。

(2)論点2 事業所得の収入や必要経費の額を把握するためには、(一般消費者取引を除き)経済取引に番号付きの資料情報を税務当局に提出することが必要であり、所得の補足に役立つ。ただし、納税者番号制度には、取引のすべてを把握できるかという量的な面に加え、個々の取引の質的な把握という面でも限界があることを念頭に置き、官民を通じたコスト・ベネフィットの観点にも十分に留意が必要である。
 昨年の税調答申を受けた小泉首相は、石弘光税調会長に対し、納税者番号制度について「何ができ、何ができないのか、問題点を整理してほしい」と、政府税調で検討するよう指示している。首相が指示した納税者番号制度は、金融所得課税の損益相殺のために導入する金融番号とは異なり、公的年金の一元化に向け、国民全員に付与するというものである。これは、民主党が公的年金の一元化に向けて納税者番号制度の導入を求めたことを踏まえ、政府として改めて課題を整理する必要があると判断したと見られている。
 筆者はすでに、本誌「税制研究47号(2005年1月)」で指摘したが、納税者番号制度の問題は、金融所得の損益通算課税の必要性という議論から公的年金の一元化のための所得把握の必要性という議論へと移行しており、その中心の論点が、サラリーマン等の給与所得者と自営業や農業の事業所得者等との所得把握の格差問題(クロヨン:9・6・4)(注8)を解消するための課税強化策に移されようとしている。これまで納税者番号制度をめぐって議論されてきた税務行政の効率化・利便性に対する国民のプライバシー権利保護の問題という視点を超えて、所得各層の所得把握の不公平感の対立を煽った議論へと発展する危険性すら感じられる。
 さらには、平成15年(2003年)に、いわゆる益税問題(注9)を解消するため、簡易課税制度や免税事業者を縮小する消費税法の改正をしたが、これだけでは納まらず今後は、事業者の所得把握のため、事業者番号制度を導入したインボイス方式を採用し、事業者の収入(売上げ)まで税務管理しようとする動きもあり、消費税課税強化として納税者番号制度の問題も関係していることを注視しなければならない。
 納税者番号制度には、導入コストの問題や納税者のプライバシー保護の問題など重要な問題が存している。仮に税務に限定した納税者番号制度として構築する場合でも、果たして導入すべき理由があるのか改めて検討が必要である。
この税調の論点に対しては、クロヨン(9:6:4)問題は、いわれるほど大きくはないという批判が可能である。
 問題は、年金制度の一元化のために所得補足の正確性から納税者番号制度の導入を主張することである。本稿の目的ではないが、年金制度には種々の問題があり年金の一元化自体に是非論がある。
 かりに一元化を目指すとしても、クロヨン問題がいわれているほど大きな問題として存在しているとは思われない。
 納税者の税務申告の代理を行う税理士の立場から見ても、個人事業者の所得把握が不十分であるとはいえず、ほとんどの納税者は誠実に申告しているというのが実感である。最近において、課税庁がクロヨンを認めているという公式発表も存しないばかりか、また、クロヨンを問題にしているという報道も聞かない。
 納税者番号制度を導入することにより、より所得補足率を高めるということであれば、すべての消費者を含む経済取引者に番号を付与し管理する「取引監視社会」を想定しなければならない(注10)。日本がこのような監視社会になることを目指しているのかどうかは国民に問われなければならない。
 クロヨン論議は、納税者番号制度の導入を企図する目的で持ち出される、ためにする議論である。また、そこには、消費税制にインボイス方式を導入する底意もうかがわれる。

(3)論点3 税務に限定した番号制度だけではなく、広く行政全般に利用される番号制度として構築することが望ましい。「年金番号方式」は、法律上の根拠を付与し、年金非対象者等も含め広く全国民に自動的に付番する仕組みの改善が必要であるが、住基ネットシステムは(住基ネット)、すでに法律上の枠組みが存在することから早急に導入する場合には、「住民基本台帳方式」が現実的である。ただし、この場合には住民票コードの民間利用が許容されなければならない。
 筆者は、本誌「税制研究47号(2005年1月)」で、税調の平成16年答申のスタンスとして金融所得一体課税のための税務に限定した納税者番号制度が有力であると指摘したが、論点整理では、国民共通番号としての住民票コードによる納税者番号制度論が再浮上してきており、これは看過できない論点である。
 筆者はかつて、本誌「税制研究44号(2003年8月)」で、税調の平成15年(2003年)6月の「少子・高齢社会における税制のあり方」(中間答申)の納税者番号制度の導入論に対し、住基ネット利用との関係で批判したが(注11)、本稿でも再論しておきたい。
 @番号の付与方式と住基ネットとの関係
(ア)かつて論点の一つであった番号の付与方式の問題については、平成11年(1999年)12月の税調答申では、同年8月に成立した「住民基本台帳法の一部を改正する法律」の施行状況も踏まえ、必要とされる付番のあり方等について引き続き検討を進めていく必要があるとし、さらに、平成12年7月の「わが国税制の現状と課題−21世紀に向けた国民の参加と選択−」(中間答申)では、今後の検討の方向として、全国一連の番号の整備をはじめとした諸状況の進展を踏まえながら、その導入について検討を進めていく必要があるとしている。このことから、税調は、納税者番号制度の付番方式を11桁の住民基本台帳番号を想定しているものと見ることができる。
改正住民基本台帳法(改正住基法)にもとづき、平成14年(2002年)8月5日から施行、スタートした住基ネットは、すべての国民に11桁の個人番号(住民票コード)を付与し、氏名、生年月日、性別、住所の4情報(およびこれらの変更情報)により本人確認を可能とする地方自治体のシステムである。スタート時点で、改正住基法の付則で規定された施行の前提である「個人情報保護法」が成立していないため、住基ネット参加を見合わせた自治体も数件あり、個人情報保護法が施行された平成17年4月からも3自治体が住基ネット参加を見合わせている。なお、住基カードの交付状況は、平成17年3月末現在544,708枚(総務省予想値は平成16年3月で300万枚)で住基人口比0.4%に過ぎない(注12)。
(イ)住基ネットは、国が推進する「電子政府・電子自治体」の基盤となるものである。平成13年(2001年)に策定された「e−Japan重点計画」により住民が行う行政機関への申請・届出等を2003年度までにインターネットでできるようにするとされた。
また、近年、国税庁は、国税総合管理(KSK)システム(注13)の開発を行い平成7年(1995年)1月から順次導入局署を拡大し、平成13年(2001年)11月に全国への導入を完了した。
さらに、財務省は平成14年(2002年)9月4日、平成15年(2003年)度までに所得税や消費税など国税の申告をインターネットでできるようにする(電子申告)など、行政手続の電子化に向けた行動計画(アクションプラン)を発表した。財務省の新たな行動計画によると、税務関係では、個人が所得税の確定申告を行う際、自宅などから国税庁のホームページに接続して書式を取り込み、必要事項を記入して送信、手続きが完了できるようにする。事業主などが各税務署で申告し、納税していた消費税についても、インターネットを活用して手続きを可能にする方針で、いずれも平成16年(2004年)1月から実現可能とした(注14)。
国税の確定申告書は住民税の申告書とリンクしており、自治体が条例で住基ネットの利用範囲に住民税を含むことになれば、国税と一体として管理する仕組みを導入する案が出てくることは予想される。
(ウ)平成14年(2002年)12月に成立した「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(行政手続オンライン化法)」では、行政手続(約52,000手続)について、書面によることに加えオンラインでも可能とされるようになった(注15)。
(エ)現在、住基ネットは、民間での利用が禁止されているが、法律を改正して、納税者番号制度として民間利用まで範囲を広げることも予想される。このように見てくると、税調や政府の施策は、多くの国民が危惧する国民総背番号制度に近づいているといわなければならない。

 A納税者番号制度の導入時のコスト問題
上述したように、住基ネットは納税者番号制度との連動利用可能性を高めたものといえる。改正住基法等の法律をさらに改正(民間利用の解禁など)すれば銀行での口座開設や株式売買だけではなく、不動産取引、サービスの提供など民間での各種経済取引にも納税者番号が利用されることになる。
納税者番号制度の導入コスト問題については、住基ネットの利便性が強調されると、住基ネットの住民票コードを利用することの方が、新たに納税者番号システムを導入することよりコスト面の効果が強調されることになりうる。
かつて税調は、納税者番号制度導入のコストを試算したことがあるが(注16)、最近は数値的な試算をしていない(注17)。これも住基ネットと連動した納税者番号制度が念頭にある証左である。
一方、住基ネット構築に400億円、運用に200億円を必要とするシステムが導入後3年間でどれだけ行政の効率化に寄与しているかを総務省は具体的数字を挙げていない。このままでは、税金の無駄遣いの謗(そし)りをまぬがれない(注18)。
 納税者番号制度に住民票コードを利用する構想は、現在の住基ネットが行政の効率性と運用コストの関係(費用対効果)で、税金の無駄遣いの批判をかわす方策であるという見方も可能である。
 財政改革や不良債権問題の中、納税者番号制度導入のコストとランニングコストには多額の予算が必要になる。納税者番号制度に対応する金融機関や民間企業が導入するシステムやセキュリティ確保にも大きな費用がかかることが予想される。このような膨大なコストに見合う効果が期待できるかどうか、国民の議論の対象にされなければならない。

 B納税者のプライバシー保護の問題
(ア)近時の行政内部の情報漏洩事件だけを見ても、防衛庁の秘密データ漏洩、入札予定価額の漏洩、犯罪歴の漏洩、試験問題の漏洩、病歴の漏洩など情報の流出が数多く発生している。これは、公務員の守秘義務だけでは個人情報は保護されないことを物語っている。
 現在は税務署管内の個人・法人に番号を付けて(「整理番号」といわれる)管理しているが、納税者番号制度が導入されると、上述した住基ネットと連動しない場合でも、個人の税務に関する情報が税務当局に収集され、その利用に際し個人のプライバシーが流出・侵害される恐れが生ずる(注19)。とくに問題となるのは、税務目的で収集された納税者の情報が他の行政機関や金融機関等に流用される危険性があることである。
 納税者番号制度が住基ネットと連動すれば、どの行政機関でも納税者の個人情報を見ることができ、これに対する規制措置を講じたとしても、納税者の個人情報に対するプライバシー流出・侵害の危険性はさらに高まる。
(イ)納税者のプライバシー権利の侵害については、付番号が共通になってくると、民間部門でもこれを利用したデータベースが構築されて行くことになって、個人情報の商品化(プライバシーの商品化)という大きな社会問題に発展する恐れも生じる。
クレジットカード、運転免許証、パスポート、健康保険番号など各種番号が共通番号になって管理された場合を想定すると誰にでも個人のプライバシーの流出・侵害の危険性が認識されよう。最近の米国でのクレジットカード顧客情報の流出事件や日本の金融機関の顧客情報紛失・流失事件は軽視されてはならない。
公務員の守秘義務を徹底し、民間での番号利用に制限を設けても、ネットで流通する情報は、常に流失する危険性が潜んでいることを認識しなければならない。
(ウ)住基ネット差止め訴訟
住基ネット指止め訴訟で、平成17年(2005年)5月30日、金沢地裁は、「本人の同意なき場合は違憲」として、原告らの個人情報を住基ネットから削除することを命ずる判決を出している(注20)。また、同年5月31日の名古屋地裁では、住基ネットの情報はプライバシーと言えるものではないとして、原告の請求を棄却した(注21)。なお、全国的に、住基ネット差止め訴訟が数件提起されている。

 C個人情報保護法との関係
(ア)「個人情報保護に関する法律」(個人情報保護法)が、平成17年(2005年)4月1日より施行された。これまでわが国では、個人情報保護に関する法律として1988年(昭和63年)制定の「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」(行政機関個人情報保護法)が存するだけであった。行政機関個人情報保護法は、対象となる情報が行政機関の電算機処理をした情報に限定されるなど個人の情報保護法としては不十分なものであった。
 個人情報保護法の成立は、1999年(平成11年)の改正住基法をめぐり住基ネットのプライバシー侵害を懸念する声が高まり、改正法附則1条等で民間部門の個人情報保護も含めた法整備を約束したことに起因する。個人情報保護法を受けて行政機関個人情報保護法も改正された。
 個人情報保護法の第1章から4章までは同法の基本的性格を有しており、5章以下は民間部門の個人情報保護の一般法としての性格を有している。さらに、行政機関個人情報保護法は、個人情報保護法の下に位置づけられる(注14)。
 個人情報保護法は、プライバシー保護法制というよりは、個人識別情報を広く対象にしたデータ保護法としての性格を有しているといわれる。しかし、同法3条は、基本理念として「個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものであることにかんがみ、その適正な取扱いが図られなければならない。」と規定しており、憲法13条やプライバシー権として判例・学説で認められた「自己情報コントロール権」が基礎に存していると解することができる。
(イ)納税者番号制度と個人情報保護の問題としては、改正行政機関個人情報保護法が中心となるが、同法が納税者の権利保護法として十分な規定がなされているとはいえない。
 改正法は電算処理情報だけでなく手書の情報まで対象を拡大したこと(同法2条3項)や本人の情報訂正請求権を認めたこと(27条)、さらに、罰則規定を導入したこと(53条以下)など改善点はあるが、行政機関の個人情報保護について次のような問題点がある。
・個人情報保護法の民間の個人情報取扱事業者には、「偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。」(個人情報保護法17条)とされるが、行政機関については、公務員の法令遵守義務を理由に規定されなかった。
・改正前の行政機関には認められていなかった個人情報の利用目的の変更について、改正法では個人情報取扱事業者の場合と同じく、行政機関にも「利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。」(行政機関個人情報保護法3条3項)として利用目的の変更ができるようになった。
・個人情報保護の救済法として、行政機関の処分に対する事後救済制度である不服申立て手続(同法42条)とは異なり、処分前の事前の救済制度として位置づけられる苦情処理制度については、改正前と同じ「 行政機関の長は、行政機関における個人情報の取扱いに関する苦情の適切かつ迅速な処理に努めなければならない。」(同法48条)という努力規定のままであり、苦情処理手続が第三者機関による救済手続きにはなっていない。これは、個人情報取扱事業者等に対する苦情処理手続にも当てはまる。
・外国の個人情報保護法やわが国の地方自治体の個人情報保護条例に比べ、「センシティブ情報」の収集制限規定(注16)がない。
・オンライン結合の制限についても規定されていないなど、ハッキング等セキュリティ保障上の問題がある。
 総務省は、2004年9月に「行政機関の保有する個人情報の適切な管理のための措置に関する指針について(通知)」を各省庁に出しているが、上記問題点については依然として懸念が残る。

4.記録及び記帳に基づく申告制度
(1)論点1 事業所得に係る必要経費の概算控除制度(概算経費率)の導入の必要性。
 論点整理の中の事業所得の箇所で、正しい記帳によらない場合には必要経費の実額経費を否認できる概算経費控除制度を導入する考えを示している。
 これは、かつて税務当局が利用していた「標準所得率」の復活であり、推計課税の強化に通ずるという批判を免れない。一般的に事業所得の納税者は、必要経費の概算経費率より実額経費計上のほうが有利である。税調は、正しい記帳による場合にのみ実額の必要経費を認めるというが、「正しい記帳」とは、家事関連費との区分ができるものを意味しているのであれば、その判断には当然に見解の相違が生ずる性格のものである。これを、税務当局にとって都合のいい内容でなければ実額の必要経費を認めないということであれば、自主申告納税制度を否定することに通ずる非民主的な行政手続であるといわなければならない。
(1)論点2 資料情報協力要請の問題
平成15年(2003年)6月の中間答申で、税調は、「昭和58年11月の答申(「今後の税制のあり方についての答申」)において、資料情報制度に関し、一般的な資料収集目的のための協力制度及び官公署等の協力制度について指摘した。前者については、従来から関係者の任意の協力に基づいて行われてきた一般的な資料収集の根拠規定を設けるというもので、未だその制度化は図られていない。また、後者については、昭和59年に官公署等の協力制度が設けられたが、必ずしも実効性があがっていない。行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行など行政情報公開への対応が進展している中で、経済取引に関する資料などを秘匿する理由はなくなりつつあると考えられる。こうしたことを踏まえ、今後、この制度を強化することが適当である。」と説いている。
 これは、正に前述した共通番号による納税者番号制度の導入を図りながら、資料・情報収集の権限強化を目論むものである。
 後述する立証責任の問題にも関係するのが、昭和59年(1984年)の税制改正における「納税環境の整備」に関する改正で、白色申告者の記帳義務・記録保存義務(所得税法231条の2)が規定され、また、国税通則法116条(原告が行うべき証拠の申出)の規定が改正され、納税者の主張が時機に後れた攻撃防御方法として却下されうるものとされた。さらに、この時の改正で国税庁、国税局又は税務署の当該職員による官公署等への協力要請制度が導入された(所得税法235条2項、法人税法156条の2、相続税法60条の2)。
 税調の考えは、納税者の権利保護制度の構築もないまま、いわば税務当局に今以上の権限を付与しようとするものである。

5.立証責任の転換の問題
平成15年(2003年)6月の中間答申でも税調は、税務訴訟における立証責任を納税者に転換する必要性を説きながら、「現在のように税務当局が一般的に立証責任を負う下では、適正・公平な課税を実現するための環境整備の一環として、立証責任を果たせるだけの十分な資料を収集できるような環境が整備される必要がある。」と述べている。
 税調が指摘する納税者に立証責任を負わせる考えは、かつて見られた、行政行為の適法性の推定や公定力を理由に行政処分の取消を求める納税者に立証責任(証明責任)があるとする見解に沿うものといえよう。
 今日では、行政訴訟においても民事訴訟と同じく立証責任分配の原則が妥当するものとされ、法律要件分類説に従って立証責任が分配されるという見解が一般的であり(注24)、処分の根拠となる課税要件事実について課税庁が立証責任を負担するというのが多数説である。税務訴訟の訴訟物は、処分理由の適法性・違法性の存否であり、立証責任は処分する課税庁が負うものであると解されている(注25)。
 税調は、立証責任の転換が図られなければ、立証責任を果たせるだけの十分な資料を収集できるような環境が整備される必要があるとして、納税者番号制度も想定した資料収集の権限強化を目論んでいるものであり、納税者の権利保護の観点から看過できないものである。

6.納税者の権利保護制度の必要性
 本稿では、税調の納税環境の整備論における納税者の税務行政手続の権利保護制度論の欠如について、あるべき納税環境の整備論として、現代租税国家の標準の制度ともいえる納税者の権利保護制度の必要性と納税者の苦情処理制度の重要性について論述したい。
(1)納税者の権利保護制度導入の必要性
 申告納税制度は、憲法に定められた国民主権の原理に沿うものである。すなわち、申告納税制度は、租税法律主義に基づいて、納税者自らが租税債務を確定する機能を認めた制度であり、納税者の自覚を通じて、国政に対する関心を高める民主的租税制度として尊重され、さらに維持発展させなければならない。
 申告納税制度にもとづく場合はもとより、税の賦課・徴収においては、納税者は誠実で正直であることが要求され、また、課税庁は、納税者が誠実で正直であるという前提に立って丁重な対応をすることにより、はじめて税務行政の執行が有効に機能する。
 したがって、納税者が、税務行政は公正、透明、民主的に行われていると確信し、課税庁と納税者の間に良好な関係が維持されていることが最も重要である。そのためには、税務行政に対する納税者の信頼の確保と、公正、透明で民主的な税務行政の運営を図るために、納税者の権利保護制度を確立する必要がある。
しかし、わが国の税法の中に納税者の一般的権利を明確に規定しているものは存しない。国税に関する法律の基本的事項及び基本的事項を定めた一般法である「国税通則法」1条(目的)の中にも、納税者の権利の字句は見当たらない。納税者の権利として強いて指摘すれば、税務署等の税務行政庁が下した更正処分等の課税処分に対して、不服を申立てる権利や裁判を受ける権利を挙げることができるだけである。
 例えば、個人事業者や法人が税務署から税務調査を受ける場合、事前に調査の通知を受ける権利やその理由を求める権利及び調査の適正な手続を受ける権利が保障されていない。また、納税者には、課税処分に際して、事前に弁明する権利もその処分理由を具体的に文書で開示される権利もない。
 納税者の権利が保障されていないために、例えば、相続税や所得税の調査において、税務職員が納税者の居住部分に上がり承諾なくタンス等を開けた事件(注26)や法人の調査において、代表者家族の入院先に連絡を求めたりするなどの事案も起きている。これは、脱税などの強制調査の事案ではなく、一般の任意調査において見られる。
 わが国の税法には、税務調査に関する規定が、1条文のみ裁量的に「調査について必要があるときは……調査できる」(所得税法234条、法人税法153条参照)というものがあるだけであり、その他の手続(調査の通知、理由開示、時間・場所、代理人の選任、弁明手続、苦情申立て手続など)は何ら法文化されていない。また、税務調査の違法性をめぐって多くの裁判例がでており、裁判例は、わが国の成文法主義の見地(法文があることを優先して解釈する考え方)から原告納税者に不利なものがほとんどである。
 諸外国では、租税国家としての租税負担率の上昇に伴い、国民に高負担を求めるためには、納税者の協力が不可欠との考えの下に、納税者憲章や納税者の権利宣言を制定するとともに、納税者の権利を明確に規定し、それを保護するための手続規定を整備して、課税庁と納税者の協力関係を深めようとしている(注27)。
 わが国においても、納税者の権利保護制度を導入することにより、税務行政に対する納税者の信頼を高めることが重要であり、これにより課税庁の税務行政の執行がより円滑になって、申告納税制度が一層有効に機能するように企図すべきである(注28)。納税者番号制度の導入を急いだり、実額の必要経費を否認したり、納税者に立証責任を転換するなどの納税環境の整備論は、納税者を管理し監視することになるものであり、決して納税者の信頼を高めることにはならないだろう。

(2)納税者支援調整官制度改革の必要性
 納税者の苦情処理制度として、近時国税庁が導入した納税者支援調整官制度について論述したい。
 納税者支援調整官は、平成13年(2001年)6月29日付国税庁長官の「納税者支援調整官の事務運営について(事務運営指針)」に示されているように財務省組織規則により設置された。
納税者支援調整官は、申告納税制度が円滑に機能するよう、適正かつ公平な課税の実現に努め、納税者の理解と信頼を得るという税務行政運営の基本的な考え方を踏まえ、納税者から寄せられた苦情及び困りごとについて、納税者の立場に立って迅速かつ的確に対応し、もって税務行政に対する納税者の理解と信頼を確保することが任務とされている。国税庁の納税環境の整備の指針の中でも、人員等制度の充実が示されている(注29)。
納税者支援調整官の職務は、財務省組織規則の規定にもとづくが、苦情を受け付け、その処理に必要な事務を行うものとされている。苦情申立てとは、一般的に、税額等の法律的な争いを解決する不服申立て(異議申立てや審査請求)とは異なり、納税者が国税の徴収手続きや税務調査等の過程で生ずる税務署職員の対応に対する不満等を申立ててその是正等を求めることである。
筆者らの国税局に対する情報開示請求に基づく資料分析から、納税者支援調整官制度の問題点を指摘して、この制度の改革の必要性に言及しておきたい(注30)。
(ア)受理処理件数と制度の周知
 納税者支援調整官制度が導入される前は、苦情処理は税務相談室や総務課で行われ、その処理手続の内容について窺い知ることができなかった。また、納税者の苦情申立てについての周知方(PR)などもなされていなかった。
 しかし、納税者支援調整官制度が導入された後でも、この制度の趣旨や苦情処理申立てについての周知がなされていない状況にある。情報開示請求にもとづく資料によると、東京国税局の場合、制度導入前の税務相談室の処理件数と納税者支援調整官苦情事案処理件数がいずれも300件台ということであり、制度の周知が図られているとはいえない。
 今後、制度の充実を目指すとともに制度の周知徹底をはかる方策を講ずべきである。
(イ)納税者支援調整官の人選と権限
 納税者支援調整官は全国の税務署の1割程度しか配置されておらず(配置されていないところは総務課が担当)、納税者支援調整官の役割が十分であるとはいえない。また、その人選にあたり一定の資格審査など適切な登用手続がなされているかどうか不明である。
 さらには、苦情申立人が納得する事実確認と苦情処理のために独立した調査権限と権威が必要である。税務オンブズマン的役割が求められるが、この点については、韓国の「納税者保護担当官」制度が参考になる(注31)。
(ウ)謝罪の方法について
 納税者に対する税務職員の対応についての謝罪が比較的多く見られるが、誤った行政手続や指導などには適正な対応が求められる。とりあえず謝罪し、その後対応すればよいということであれば本当の謝罪ということにはならなくなる。
 納税者支援調整官制度が周知されてくれば、もっと多くの苦情申立てが予想されるが、経費弁償や補償を含めた適切な謝罪の方法が検討されなければならない。
(エ)年次報告と改善事項の公開
 納税者支援調整官の苦情処理状況は、年次報告するとともに、勧告や改善がなされた事項についてはこれを公開すべきである。

(2005年7月記)

(注1)政府税制調査会http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top.htm参照。
(注2) 金子宏「租税法(第10版)」(弘文堂)642ページ参照。
(注3)政府税制調査会http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top.htm参照
(注4)長谷川博「政府税制調査会答申と税務行政の課題」税制研究44号(2003年8月)
(注5)読売新聞(2004年12月1日)
(注6) 東京税理士会2004年10月13日「金融所得課税の一体化のための選択性の番号制度導入に関する意見」参照。
(注7)森信茂樹「納税者番号制を導入すべきか」(文藝春秋編2005日本の論点289ページ)参照。
(注8)クロヨン(9:6:4)は、所得税が国民各層の間で必ずしも公平に捕捉されていないと主張する立場から、サラリーマンは「9」割、自営業者は「6」割、農家は「4」割であるとする意味。ジャーナリステックな発祥といわれる。
(注9)益税問題は、消費税制の中、小規模企業に認められる簡易課税制度や免税制度の適用により原則計算した税額より納税額が少なくなるという不公平感についていわれる。
(注10)同旨、石村耕治「納税者番号制を導入すべきか」(文藝春秋編・2005日本の論点293ページ)参照。
(注11)前掲(注4)
(注12)総務省http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/daityo/参照。
(注13)KSKシステムは、地域や税目を超えた情報の一元的な管理により、税務行政の根幹となる各種事務処理の高度化・効率化を図るために導入したコンピュータシステムである。また、KSKシステムは、政府が進めている電子政府の実現の一環である電子申告や電子納税等の税務行政のIT化に不可欠な情報通信基盤でもある。なお、
http://www.nta.go.jp/category/outline/japanese/text/02/11-14.htm参照。
(注14)財務省のアクションプランについては、
http://www.mof.go.jp/jouhou/sonota/so140904a.htm参照。
(注15)http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/daityo/index.html参照。
(注16)1992年(平成4年)税調小委員会報告の中で、納税者番号制度のコストが試算されている。個人に対する番号付与コストとしては、初期費用として1000数百億円以上、経常費用として毎年数100億円以上が見込まれ、法人に対する番号コストも個人の場合より少ないものの相当程度の費用が必要とされている。なお、http://www.h-hasegawa.net/hase4.htm参照。
(注17)http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/tosin/zeichof/z028.htm参照。
(注18)NHK・BSディベート「本格稼動から2年“住基ネット”はどうあるべきか」(2005年7月)http://www.nhk.or.jp/bsdebate/参照。
(注19)過去の例からして、内部の情報を外に漏らす公務員は少なくないので、税務署の情報だけが堅く守られていて安全ということはない(浅井逸走・浅野宗玄著「Q&A住基ネットとプライバシー問題」123ページ。本書は、住基ネットや納税者番号制度のメリットを強調している)。
(注20) H17. 5.30 金沢地方裁判所 平成14年(ワ)第836号,平成15年(ワ)第114号 住民基本台帳ネットワーク差止等請求事件
金沢地裁ホームページ参照。
(注21) H17. 5.31 名古屋地方裁判所 平成15年(ワ)第491号,平成16年(ワ)第1593号 住民基本台帳ネットワーク差止等請求事件
名古屋地裁ホームページ参照。
(注22) 個人情報保護法第6条「政府は、国の行政機関について、その保有する個人情報の性質、当該個人情報を保有する目的等を勘案 し、その保有する個人情報の適正な取扱いが確保されるよう法制上の措置その他必要な措置を講ずるものとする。」なお、宇賀克也外編「対話で学ぶ行政法」(有斐閣)140頁参照。
(注23)EU指令8条1項「加盟国は、人種、民族、政治的見解、宗教、思想、信条、労働組合への加盟に関する情報を漏洩する個人データの処理、もしくは健康又は性生活に関するデータの処理を禁止するものとする。」、イギリスのデータ保護法、アメリカのプライバシー法、東京都個人情報保護条例、神奈川県個人情報保護条例など(前掲・宇賀克也外編「対話で学ぶ行政法」参照)。
(注24)中尾巧「税務訴訟入門」(商事法務研究会)48頁参照。
(注25)北野弘久「税法学原論(第5版)」(青林書院)484頁。
(注26)違法な税務調査に対して国に対して損害賠償請求を認めた事例として、京都地裁平成7年3月27日判決(タインズZ208−7484)、同控訴審大阪高裁平成10年3月19日(タインズZ231−8116)参照。
(注27) 主要国の納税者保護制度については、湖東京至編「世界の納税者権利憲章」(2002年中小商工研究所刊)参照。
(注28) 導入されるべき納税者の権利保護制度について、詳しくは前掲(注4)参照。
(注29)http://www.nta.go.jp/category/press/press/2740/01.htm参照。
(注30)詳しくは、長谷川博「納税者支援調整官制度改革の必要性−苦情処理事案の分析と国際比較を通して−」税制研究46号(2004年8月)参照。
(注31)韓国の「納税者保護担当官」制度については、前掲(注27)「世界の納税者権利憲章」所収の拙稿・韓国編および前掲(注30)参照。

(青山学院大学大学院法学研究科ビジネス法務講師・税理士 はせがわ ひろし)