韓国の電子申告の実情(視察報告) 2001年1月
掲示板掲載記事から


韓国の電子申告実演の写真 投稿者:長谷川 博  投稿日: 1月12日(金)04時12分08秒

李税務士事務所での韓国の電子申告実演の写真を紹介します。









韓国の電子申告の現状 投稿者:長谷川 博  投稿日: 1月12日(金)04時04分23秒

ソウル旅行記(電子申告の現状)をお届けします。
(視察の写真は別項で紹介します。)

視察先 李信愛税務士事務所

日 時 2000年1月8日


1.電子申告の対象
韓国では2000年7月から電子申告がスタートし、現在、ソウル市内の税務士(のクライアント)だけに限って試験的に源泉所得税と付加価値税の税目を対象に電子申告が実施されています。

2001年からは全国の納税者が対象になり、2002年からはすべての税目に対して電子申告が実施される予定です。

2.電子申告の方法
視察した源泉所得税について、その概要を紹介します。

@まず、税務士事務所の会計ソフト(2種のうちKICOMを採用)で申告書を作成し、これを電子申告用に変換します。
A次に、国税庁の電子申告センター(HP)へアクセスし、税務士のIDを入れます。
これを送信準備画面で確認すると、上覧に税務士のID、下欄に納税者の名前が出ます。その後、送信します。
B送信が終了すると、画面で国税庁から受付したという表示が出てきます。
これを印刷することもできますが、納税者から事前に電子申告の同意書が税務士に提出されているので、特に納税者には控えは要らないらしい。

申告後、源泉税の場合、納税者は納付書で10日までに金融機関等で納税する。

なお、源泉所得税は、日本と似ていて、原則給与等支払の翌月10日が申告納付期限です。また、付加価値税は、法人が年4回申告納付、個人が年2回です。

3.電子申告利用の状況
付加価値税の電子申告の状況は、2000年10月の第2期予定申告で56人の税務士が申告しており、源泉所得税では、334人の税務士が利用しています。

ソウル市内の税務士の電子申告登録者数は、2000年10月31日現在で1,695人(全体の 62.9%)で、利用者数は、11月10日現在で608人(35.8%)となっています。

以上です。

韓国の電子申告の現況と質疑応答No.1 投稿者:長谷川 博  投稿日: 1月17日(水)17時39分16秒
韓国の電子申告の状況について、税理士仲間のML上で質問がありましたので、李税務士にお願いしてその回答をいただきました。李先生ありがとうございます。
そのQ&Aを紹介します。

Kさんの質問:
> まだ、電子申告が始まったばかりのためでしょうか?税務士の利用率が
> 思ったほど高くないなと思います。
>  地域により温度差があるのでしょうか?もしくは、コンピュータ、インター
> ネットに不慣れな税務士もいるためでしょうか?
>
>  韓国では、いわゆる接続業者の存在はいかがなものでしょうか?
> 電子申告を税務士以外でも業として行うことを容認されているのでしょう
> 納税者は電子申告をどのように思っているんでしょう?

李税務士からのmail:
さて、この質問事項ですが、
1)ソウルの税務士の中で、実際に電子申告を行われている数が思ったより少ないというのは、そのとおりです。
その理由は、まず税務士の中で思い切ってやろうという人が少ないからです。主な原因は電子申告体制を整えるのに費用がたくさんかかることでしょう。また、パソコンとかインタネットに慣れていないことも挙げられます。
それに、強制ではない電子申告をするために、パソコン(586級以上が必要)を購入する費用を国が援助してくれるわけでもないのに、いまの不景気でお金を使いたくないでしょうね。
2)韓国は今現在は、税務士しか電子申告が認められていないため、業として、電子申告をしてくれる会社はありません。
3)納税者は、電子申告に対し、何にも考えていないのが、現実です。なぜなら、自分の税務士が全部やってくれるので、自らそのことに考える必要性はないと思われているようです。
税務士に頼んでいない納税者は、規模の小さいもんですから、なおさらのことです。
なお、この事は大抵「東京税理士会の電子申告視察報告書」に纏めているはずですから、それをご参考になさって下されば幸いです。 では、取り急ぎお知らせまで。

李 信愛

韓国の電子申告の現況と質疑応答No.2 投稿者:長谷川 博  投稿日: 1月17日(水)17時41分52秒

同じく税理士のMLでの質問への回答です。

Oさんの質問:
> 認証の問題、セキュリティーの問題が依然として残ってますよね。
> その辺日本は韓国より遅れているんでしょうか。韓国が見切り発車なのでしょうか。

李税務士からのFAX回答:
1.電子申告における認証書
認証書は、印鑑証明書に当たるもので、電子文書に署名された電子署名が正しいものか否かを確認(検証)する役割をしています。

認証書には、使用者の身分、認証書の有効期間、認証書の発行機関、使用者の公開キー等の情報が収録されていて、その内容は公認認証機関が保証します。
公認認証機関は電子文書の流通で引き起こる問題を解決するため「電子署名法」によって認証書を発行し、またこの機関が認証した電子署名は「電子署名法」の法律に基づいて、記名捺印(署名)と同一な法律的効力及び証拠力があります。

ところで、電子署名は電子文書に対する錠の役割をしている「個人キー」と、鍵の役割をしている「公開キー」で構成された二つの電子署名キーによって行われます。
この二つのキーは、各々の使用者ごとに唯一に発給され、「個人キー」は使用者が保管し、「公開キー」は認証書を発給した公認認証機関が保有します。

従って、各使用者が自分の「秘密キー」で電子署名した文書は(すでに暗号化されている)、必ずそれと一致する「公開キー」によって解読されるため、その文書の作成者が確認でき、また文書の偽造・変造のときには「公開キー」のみでは、電子文書が解読できないため、文書の偽造・変造の与否が判断できます。

現在は、電子申告システムに接続すると、自動的に「韓国証券株式会社」と連結され、認証書が発給されるが、前述したように公認証明機関が認証した電子署名は法律的な証拠力が認められているため、申告を代理している税務士の立場では当然信頼せざるを得ないといえます。
ただし、申告書に納税者のサインが入力されていないため、納税者から「国税電子申告同意書」を受け取って、代理人の税務士の事務所に保管するようになって
います。

2.セキュリティの問題
セキュリティについては、セキュリティソフトの利用で暗号化すること、また電子申告センターのシステムにファイヤーウオールの機能を持たせるという二種のセキュリティ体制をとっているので、ハッカーの侵入に対する防御体制は十分整っています。
ただし、このように十分な体制をとっているとはいえ。100%完璧ということは出来ないでしょう。

以上です