経済戦略会議が「公会計制度の改善」を答申

(1999226)

  

 経済戦略会議(The Economic Strategy Council)は、内閣総理大臣の諮問機関として、平成10年8月24日に発足し、我が国経済の再生と21世紀における豊かな経済社会の構築のための構想について調査審議し、意見具申を行うことを任務としています。

 会議は、10人の委員で組織されており、樋口廣太郎アサヒビール(株)名誉会長が議長に選任され、また、中谷巌一橋大学教授が議長代理に指名されて、平成10年10月14日に「短期経済政策への緊急提言」、同11月6日に経済戦略会議アピール「緊急経済対策に望む」、同12月23日に「日本経済再生への戦略」(中間とりまとめ)を公表したあと、平成11年2月26日に「日本経済再生への戦略」(答申)をとりまとめ、公表しました。

 

経済戦略会議委員名簿[50音順・敬称略]

井手 正敬  西日本旅客鉄道(株)会長

伊藤 元重  東京大学教授

奥田  碩  トヨタ自動車(株)社長

鈴木 敏文 (株)イトーヨーカ堂社長

竹内 佐和子 東京大学助教授

竹中 平蔵  慶応義塾大学教授

寺田 千代乃 アートコーポレーション(株)社長

中谷  巌  一橋大学教授

樋口 廣太郎 アサヒビール(株)名誉会長
森   稔  森ビル(株)社長

 

1999226日の経済戦略会議の「日本経済再生への戦略」(答申)の中から、公会計制度の改善にかかる個所を抜粋して紹介します。(下記URLを参照。)http://www.kantei.go.jp/jp/senryaku/990226tousin-ho.html

 

 

第2章

「健全で創造的な競争社会」の構築とセーフティ・ネットの整備

I.「健全で創造的な競争社会」の構築

1.「小さな政府」へのイニシアティブ

(1)公務員制度の改革……(略)

 

(2)「制度改革委員会」による制度改革の推進

 現在、行政改革推進本部のもとに規制緩和委員会が設置されているが、現在の組織(委員12名、事務局約20名)では、多人数の規制を行う官庁組織に対し、十分強力でかつ迅速な規制撤廃を推進できない状況にある。人々の自律的な活動を保障するための規制撤廃をより前向きに推進するだけではなく、健全な競争社会の構築を阻む様々な制度の壁を打破し、健全な競争を促進するために、人員を大幅に拡充しかつ権限の及ぶ範囲を狭義の規制だけでなく、税制、補助金等にまで拡大・強化した総理直轄の「制度改革委員会」を新設する必要がある。

 

(3)公会計制度の改善

公的部門の効率化・スリム化を進めていく上での大前提として、また、政策の事後評価を行う観点から決算はこれまで以上に重視されるべきであり、中央政府(特殊法人等を含む)及び地方公共団体(外郭団体を含む)のいずれにおいても以下のような方向を基本に会計制度等の抜本的改革を進め、会計財務情報基盤を整備する必要がある。

国民に対して政府及び地方公共団体の財政・資産状況をわかりやすく開示する観点から、企業会計原則の基本的要素を踏まえつつ財務諸表の導入を行うべきである。

具体的には、複式簿記による貸借対照表を作成し、経常的収支と資本的収支を区分する。

公的部門全体としての財務状況を明らかにするため、一般会計、特別会計、特殊法人等を含む外郭団体の会計の連結決算を作成する。

現金主義から発生主義に移行する。

以上の改善を進めるなかで、地方自治体については、全国統一の基準に基づいて財務諸表を作成・公表することにより、各自治体間の比較・評価を可能とすべきである。

決算に関しては、外部監査の導入・拡充を行うとともに徹底した情報開示を行う必要がある。

 

(4)国公有財産の有効活用

 土地等の有効活用を図りながら、累積する財政赤字を解消する手段として、国公有財産の処分や有効活用を図るべきである。

この観点から、総理が昨年731日の初閣議で指示し、1217日に公表された、売却可能な国有財産のリストアップは、総理のリーダーシップの発揮という観点からも有意義な第一歩として高く評価される。今後は一刻も早く具体的な売却を進めるべきである。

 さらに、政府が保有する株式の売却を促進する。

一方で、特殊法人や公有財産の明細は公表されておらず、国・地方を通じた統一的な情報公開が行われていない。特殊法人や地方自治体は、国民の要請にこたえて、早急に国と同様のリストアップを行うべきである。

また、売却が適当でない国公有財産でも、有効活用できる資産については積極的にこれを活用し、財政の健全化に役立てるべきである。たとえば、大都市の一等地に建てられた公務員宿舎や庁舎等は高層化し、残余部分を賃貸することや、全国の河川敷、国公立大学敷地などについても有効利用の可能性を検討すべきである。

 

また、「経済再生に向けての政策の考え方」を整理した作表は、下記URLを参照して下さい。http://www.kantei.go.jp/jp/senryaku/990226tousin-s2.html

 

なお、次のURLは、税理士の片山光代さんが代表をつとめる「公会計を考える会」(1999515日から「公会計改革を推進する会」に名称変更)のホームぺージです。(片山光代著「これからの公会計」ぎょうせい99.4.15発行も参照されたい。)

政府や地方自治体の会計は、家計簿と同じ方式で現金主義の単式簿記によって行われております。一方、企業の会計は発生主義の複式簿記で行われ、貸借対照表や損益計算書により財政状態と経営状態を表示しております。同会では、政府や地方自治体の会計(これを公会計といいます)に企業と同じ会計方式が導入されることにより、貸借対照表が公開されて国民・市民の財産内容や税金の使い途が明確になることができ、これこそ行財政改革の基本であるとして、公会計制度の改革を主張しております。

同会には、また、東京税理士政治連盟をはじめ多くの税理士の有志や公認会計士が参加しております。私も賛同し参加しております。

http://www.katayama.org/psaj.htm

 

1999515日)「公会計を考えるシンポジューム」
(会場、新宿京王プラザ)の参加を終えて、書き記しました。

長谷川