(注)末尾に参考資料を入れました。

日本版「納税者権利憲章」を含む「国税通則法改正案」
野党3党共同で議案提出(2002年7月12日)


(TCフォーラム会報7/17より)
 民主党、日本共産党、社民党の野党3党は、さる7月12日、「税務行政における国民・納税者の権利保護に資するための国税通則法の一部を改正する法律案」を衆議院に提出しました。
 私たちTCフォーラムは、今国会において国税通則法改正案を野党4党共同により提出・成立を図るべく運動を続けてまいりました。これを受け、民主党・海江田万里衆議院財務金融委員長筆頭理事が民主党の討議を受け、全野党による共同提案を各野党に呼びかけました。これに応え日本共産党、社民党、自由党がそれぞれ党内手続きに入りました。
 日本共産党、社民党は野党共同提案について党議決定をしましたが、残念ながら自由党は主旨には賛成だが共同提案に同調しかねるとの結論に至りました。そのため、今国会において審議日程に入れるぎりぎりの7月10日に提出することができず、野党3党によりようやく7月12日に提出することができました。前通常国会における提案が民主党1党だけであったことと比べ、民主党の財務金融委員会理事をはじめ日本共産党、社民党の理事が提出者に名前を連ねたことは、大きな前進です。
 なお、今国会に提出された「国税通則法一部改正案」及び提出理由等は、前通常国会において民主党・河村たかし衆議院議員ほかにより提出された改正法案と同じです。
http://www.h-hasegawa.net/tsusoku-dpj.htm

「税務行政における国民の権利利益の保護に資するための国税通則法の一部を改正する法律案」

 国税通則法(改正後の姿)
  第一章 通則

 第一節 総則
(目的)第一条 この法律は、国税についての基本的な事項及び共通的な事項を定め、税法の体系的な構成を整備し、かつ、国税に関する法律関係を明確にするとともに、税務行政の運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の納税義務の適正かつ円滑な履行及び国民の権利利益の保護に資することを目的とする。

(第二条〜第四条 略)

 第一節の二 税務行政の基本理念等

(税務行政運営の基本理念)
第四条の二 税務行政の運営は、国民の納税義務の適正かつ円滑な履行が確保されるよう、公正を旨として行われなければならない。
2 国税当局は、その職務の執行に当たっては、国民のプライバシーを尊重しなければならない。
3 国税当局は、税務行政に関する国民の理解を得るため、必要な情報の提供を行うとともに、税務行政に関する国民の意見、苦情等に誠実に対処しなければならない。
4 国税庁、国税局、税務署及び税関並びに国税不服審判所の当該職員は、その職務の執行に当たっては、国民の権利利益の保護に常に配慮するとともに、国民が納税に関して行った手続は、誠実に行われたものとして、これを尊重することを旨としなければならない。
(税務行政運営の基本方針)
第四条の三 国税庁長官は、前条に定める税務行政運営の基本理念にのっとり、税務行政の運営の基本となる方針を定め、これを公表しなければならない。

(納税の主体たる国民に対する文書の作成及び普及)
第四条の四 国税当局は、第四条の二に規定する事項及び納税の主体たる国民の権利利益の確保のために必要な事項の概要に関する文書を作成し、普及しなければならない。
2 前項の文書は、納税の主体たる国民の立場に立って、平易な表現を用いたものでなければならない。

(中略)
  第二章 国税の納付及び徴収
 (第一節〜第三節 略)

 第四節 質問又は検査の事前通知等

(税額の確定に係る調査等のための質問又は検査の事前通知等)
第三十三条の二 国税庁、国税局、税務署又は税関の当該職員は、納付すべき税額の確定に係る調査等のための所得税法第二百三十四条第一項その他の政令で定める国税に関する法律の規定による質問又は検査(以下この条及び次条においてそれぞれ単に「質問」又は「検査」という。)をしようとする場合には、質問又は検査をする日の十四日前までに、その相手方に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。ただし、検査をしようとする物件が隠滅される等調査の目的を達成することが著しく困難になると認めるに足りる相当な理由がある場合は、この限りでない。
 一 相手方の氏名(法人については、名称)及び住所又は居所
 二 当該職員の氏名及び所属する官署
 三 調査を必要とする理由
 四 質問又は検査の根拠となる法令の条項
 五 質問をする事項又は検査をする物件
 六 質問又は検査をする日時及び場所
 七 次項に規定する変更の申出に関する事項
2 前項の通知を受けた者は、当該通知をした国税庁、国税局、税務署又は税関の当該職員に対して、質問又は検査をする日時又は場所の変更を申し出ることができる。
3 国税庁、国税局、税務署又は税関の当該職員は、第一項ただし書に規定する場合において、質問又は検査をしようとするときは、その相手方に対し、同項第一号から第五号まで及び第八号に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。

(税額の確定に係る調査の結果に関する情報の提供)
第三十三条の三 国税庁長官、国税局長、税務署長又は税関長は、当該職員が質問又は検査を行った場合には、当該質問又は検査の相手方に対し、当該質問又は検査に係る調査の結果に関する情報を提供するものとする。

(以下、略)

(参考資料)

・国税労組の機関紙を見ると、国税労組の陳情により自由党が野党4党共同提案から離脱した背景が伺われます。
 国税労組機関紙(平成14年10月4日号)から
「前期に引き続き、第13期においても、民主党内で納税者の権利保護のみを目的とした法改正論議が進められました。野党4党による法案提出が行われようとしていたことがわかり野党各党の推薦議員をはじめ関係国会議員等に対する陳情行動等を実施しました。この陳情においては、国税の執行現場における職務の困難性等を訴えるとともに、権利と義務のバランスのとれた法改正議論を強く求めました。この結果、自由党は法案提出を見送ったものの、平成14年7月11日「納税者権利憲章に関する国税通則法の一部を改正する法律案」が第154回通常国会に提出されました。しかし、必要な対策を講ずる中で、第154回通常国会の閉会とともに提出されていた法案は廃案となりました。」

・なお、国税労組の「納税者権利憲章に対する反対意見」は次のURLを参照してください。
Cyber税理士連盟・情報公開資料
http://www.cyber-zeirishi.jp/