事業税の外形標準課税導入問題が政府税制調査会から出され、これに対する税理士等の意見がある(メーリングリスト)に投稿されました。これらの議論を私の掲示板で紹介しましたが、掲載保存件数が70件のため、別のページで掲載保存することとしました。 長谷川 博
外形標準課税論議  投稿日:1126()

asahi.comからの紹介です。
外形標準課税に前向き意見 政府税調 
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政府税制調査会(首相の諮問機関、会長・石弘光一橋大学長)は21日の総会で、来年度の税制改正に向けた本格的な検討作業に入った。今後は住宅ローン減税延長など一連の要望について議論を深めることになるが、この日は、法人事業税に外形標準課税の導入を目指すとした自治省案の導入に前向きな意見が多数を占めた。外形標準課税をめぐっては、主要経済団体が同日、導入反対のコメントを相次いで発表した。
 自治省の外形標準課税案は、企業が稼いだ所得への課税という現行方式に、人件費などを反映した事業規模額に応じて課税する外形標準課税を併用しようというもの。総会では「議論する時間が十分でない」とする慎重論があったが、「課税公平の原則から当然だ」などとする声が目立った。石会長も総会後「議論はこれからだが、ようやくゴールが見えた。ここで決めないと飛んで(消えて)しまう」と述べ、来月にまとめる答申への盛り込みに意欲を見せた。

 自治省側は外形標準課税の導入は増税ではないと説明しているが、業種や規模によって増税となる企業が出てくるうえ、全法人の3分の2にのぼる赤字法人の税負担は確実に増える。このため、自民党税制調査会では、来年の参院選もあって「企業の負担増につながりかねない税制を導入する景気環境にはない」(幹部)として、早期導入に慎重な意見が強い。

 経済同友会や日本商工会議所、全国中小企業団体中央会などの経済団体は21日、全都道府県に外形標準課税を導入するとした自治省案に反対するコメントを相次いで発表した。赤字法人に対する課税への警戒感が強いためで、「実質的な賃金課税となり、雇用の下請け化、アルバイト化を促進する」(日商)などと反論している。(23:56)

Re:外形標準課税論議投稿日:1126()

あるMLでの意見から紹介します。
>  自治省側は外形標準課税の導入は増税ではないと説明しているが、

増税ではない。・・・ということは、増収+減収=零 ってことデスよね。

この算式が自治省の考えていることであれば、次の算式が誘導されます。

(減収業種・減収企業)ー(増収業種、増収企業)=零

これは、税負担の移転に他なりません。
現在においても、大企業、金融機関は、中小企業の利益を奪取して成績を良くしています。
 反面中小企業は得られる利益を大企業に奪われて、赤字を余儀なくされています。
 この上、利益を奪取された大企業の税負担を、中小企業がなぜ負担せねばならないのか?

 もう一つ、地域格差の問題もふれざるを得ない。すなわち、大企業の集中している地域と中小企業しかない地域とのアンバランスによる税負担の問題である。
 前述の大企業対中小企業の税負担の移転と同様なケースで、地域間の問題として捉えられることが出来る。
 つまり、企業の偏在による地方公共団体の得られる利益の移転である。

 このMLでいっても、全く効果はないが、これだけ不況にあえぎ、親企業、大企業から単価を切り下げられ、やむなく赤字を出している中小企業に目もくれないような、租税政策がまかり通るようであれば、確実に日本の中小企業は、減少してしまう。   困ったことですね。

 ところで、地方税は応益負担って聞いてますが、本当ですか。
実感として全くありません。
 地方税負担10万円の人(企業)と、地方税負担100万円の人(企業)で、
目に見えた公共サービスの違いは何でしょうか。
 ごみは、有料で出しているし。  応益ってなんだろう?

Re:外形標準課税論議 投稿日:1126()

 とりあえず11月9日に税政連(東京地方及び神奈川)が「税制改正に関する要望」で国会陳情した内容から外形標準課税の箇所を抜粋して紹介します。

・事業税の外形標準課税を実施することは、中小法人に対する配慮が明確でない
現状では時期尚早であり、国民の理解を得るべく、導入の是非を含め検討を重ね
られたい。
(理由)
税制調査会地方税法人課税小委員会は、平成11年7月9日に、「報告書」を公
表し、外形基準の指標となる項目について、@事業活動によって生み出された価
値、A給与総額、B物的基準と人的基準の組合わせ、、C資本金等の金額、を示
しているが、阿木系標準課税の検討に当たっては、赤字法人にも課税されるとい
う問題が生じてくる。このため、赤字法人が過度の負担にならぬよう、優遇税率
や控除制度等併せて検討すべきである。
 税負担の公平が確保できる保証が得られず、中小法人に対する配慮が明確でな
い現状下では、事業税の外形標準を実施することは時期尚早であり、さらに、そ
の是非を含め検討を重ねるべきである。

Re:外形標準課税論議 投稿日:1126()

あるMLでの意見から。
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私は、「外形標準課税導入に反対派」です。
今議論されている方法は、付加価値税の変形に思えるのです。
消費税が、本質的には付加価値税と思いますので、二重課税に思えてなりません。
また、自動車税、固定資産税はじめ、外形に対し課税されているものもありますので、なにをさして「外形標準」と呼ぶのかチョット理解に苦しんでいる状態です。

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現在日本で話題となっている外形標準課税のことはちょっと横において一言、個人的な感想を。

民主主義の基本は、やはり地方自治にあると思います。地方、つまり県とか市町村レベルの方が住民の目が行き届き、税金の使い方や、集め方について議論が尽くせる可能性が高い言うことです。
地方自治が民主主義の学校です。
そこで、住民主体の住民の住民による住民のための地方自治を行うためには、必然的にそのための財源が地方政府に必要となってくるわけです。
その財源は、現在の日本の3割自治といわれるような中央集権的な中央政府からの補助金で賄われるものであってはなりません。
地方政府の自主財源としての地方税が、住民のための地方自治には絶対必要です。
では、その財源となるべき地方税としては何が望ましいのか。

議論の順序としては、地方分権により地方政府に充分な権限の移譲をする。
その上で、財源としての租税について考えるというのが筋でしょう。
今の日本の事業税の外形標準課税の話は、まず財源論ありきで、議論の順番が違うと感じています。

住民の意思を反映した地方政府の財源としては、どんな租税が適しているのかについてです。
日本よりはるかに地方政府における民主主義が発達していると考えられるスウェーデンとカナダ、アメリカの例を引きます。
スウェーデンでは、地方政府の主たる財源は、所得に課税される個人住民税です。
一般のスウェーデン国民は、地方政府に納める個人住民税だけで国税である所得税を納める必要があるのは、一定以上の所得のある人に限られます。
一方、カナダや、アメリカの地方政府である州政府の主たる財源は、これも外形課税の一種といえる小売売上税です。
ケベック州などは、QSTという州レベルの付加価値税を有しています。また、ニューブランズウィック州のようなカナダ辺境の州は、国税である付加価値税GSTと一体化した付加価値税HSTを有しています。

繰り返しになりますが、今の3割自治で中央からの補助金だより、知事の多くが自治省出身の官僚(石川県もそうです)によってしめられている日本の現状で、財源論としての外形標準課税の話をするのは、議論が反対だと思います。
まず、地方自治その上で、財源をどうするかという順番だと思います。

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>  会社を続けながらずっと赤字で税金を払っていない状態が不自然です。

確かに原資は別にあります。バブル時代に役員報酬、地代や珍答で会社から適法に頂いたお金を、預貯金や生保、損保等に貯蓄していました。
 それを、取り崩し、取り崩しながら、生活の糧や資金繰りの苦しい法人に貸し付けてきました。
 もうそろそろ、底に近づきました、それで、顧問税理士に決算料、顧問料の値引き交渉をしています。

 また、BS上も未払い金がどしどし増えてきています。
役員報酬未払いです。支払う当てもありません。そんなとき単価切り下げを通告されてきました。切り下げられても取引を止めるわけに生きません。従業員の給料を払わなければならないからです。

 このまま個人資金が底をついたら、会社を閉めなければなりません。
しかし、閉めてしまったら、今の債務が確定してしまいます。これを払うことは無理です。これから、景気が回復するのでは?という淡い期待を持って頑張っています。
民事再生法のお世話にはなりたくない。

 消費税も払わなければなりません。消費税は預かり金だと言われています。
それなら、なぜ、売掛金(売上金未回収)についても消費税を負担しなければならないのでしょうか。回収できるかどうか不安な売掛金がどんどん増加していきます。
消費税って、立替金じゃないでしょうか。資金繰りをとても圧迫します。

 このうえ、外形標準課税ですって。もう従業委員に辞めてもらうしかないですかね。

 そのうえ、金利の上昇機運がありますね。外形標準課税って、税率を上げなくても金利が上がれば、実質増税になるんですね。

Re:外形標準課税論議 投稿日:1126()

あるMLでの意見から。
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>赤字企業はバブル以前は少なかったのか?

 平成10年分の法人250万8,852社のうち、利益計上法人は82万302社(32.7%)
欠損法人は168万8,550社(同67.3%)で、欠損法人割合は前年に比べて2.5ポイ
ント上昇した

  利益法人(社)│欠損法人(社)│合計(社)   │欠損法人   % │
    昭和63年分│ 900,973 │   950,700  │1,851,673│51.3 │
   平成元   │ 988,025 │   974,001 │1,962,026│49.6 │
    2   │1,072,334 │  1,005,936  │2,078,270│48.4 │
    3   │1,114,191 │  1,102,689  │2,216,880│49.7 │
    4   │1,075,728 │  1,215,647  │2,291,375│53.1 │
    5   │ 958,640 │  1,385,491  │2,344,131│59.1 │
    6   │ 882,713 │  1,486,569  │2,369,282│62.7 │
    7   │ 853,980 │  1,550,047  │2,404,027│64.5 │
    8   │ 859,639 │  1,576,110  │2,435,749│64.7 │
    9   │ 867,184 │  1,598,163  │2,465,347│64.8 │
     10   │ 820,302 │  1,688,550  │2,508,852│67.3 │
   (構成比) │  32.70% │   67.30%  │  100% │   │

上記の通り、バブル崩壊と言われる'91年(H3年)以前においても、約5割の
法人が赤字法人であった。
その後の景気後退経済のもと、赤字法人数は着実に増えていった。
反面法人数も増えている。
 この法人数の増加は、バブル崩壊に伴うリストラクチャーの影響を受け、
リストラにあった者が、再就職もままならず起業をしたケースがあることを
無視できません。

 平成10年頃は、まだ黒字を保っていた企業も、蓄えを使い切り、社長
個人の資金提供も底をつき始めています。
 今、平成12年度は、赤字企業は、もっと増えていることと思います。
それから、このデータは、申告法人であるので、赤字にあえぐ法人は、
税理士等から離れ、申告すらしていない現状もあります。これらの法人は、
データには含まれませんので、隠れた赤字法人も多数に及んでいる事実を
しっかり見据えることもこの種のデータを読むときの留意事項であり、実社
会を間違いなく把握する事にもなります。

Re:外形標準課税論議 投稿日:1126()

あるMLでの意見から。
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>「外形課税標準賛成」(だった?)の理由です。財源確保も大きな理由の一つですが、>素朴な根>拠は、「地域で会社を営業しているんだからその地域から便益を受けている>コストは負担すべきである」です。

 そうコストは支払うべきですね。でも、これの計測ができないからこそ、税金と言うことになるのでは無いのでしょうか?
 しかも、「営業しているからその地域から便益をうけている」なんて単純に言えますか?
 私は、税理士事務所を経営しておりますが、もしも、この同じ場所に住居したいたと考えた場合に比して、何らも行政的なサービスを余分にはうけていませんケド。(ゴミも有料の事業者に頼んでいます。)

 でも、事業税は支払っています。

> (住民税の均等割りと事業税は本当は課税根拠に別々の理由があるようです
>が<納税者> 側からは「住民税の均等割がその役割を果たしている」と思うようです。>しかしながら、事業税という税法がある以上、受益者負担ということで赤字法人も少>しは負担すべ きであ>ると考えます。

 ですから、まずは、事業税の課税原因というか、根拠を教えてください。
 私のクライアントでも、実際の仕事の内容は、サラリーマンの時と全く同じなのに、独立して事業所得に変わったとたんに、事業税を支払えと言われて支払っています。
 事業税ほど、その根拠が無い税金は、めづらしいと思っています。

Re:外形標準課税論議 投稿日:1126()

あるMLでの意見から。
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> 皆様多数のご意見誠にありがとうございました。「中小企業の赤字実態」に関するも>やもやや疑問が解けすっきりしました。

あっ、もういいんですか? 実証データから補強をしようとしていたんですが!
それじゃ〜、分析を始めた資料や、加工した資料をお送りします。

(資料は省略します。−編集者)

> 「外形課税標準賛成」(だった?)の理由です。財源確保も大きな理由の一つですが、
> 素朴な根拠は、「地域で会社を営業しているんだからその地域から便益を受けている>コ ストは負担すべきである」です。

応益課税は、言葉だけで、全く機能していないと思います。
それを、根拠に負担増を求めても、平行線を辿るだけですね。

> (住民税の均等割りと事業税は本当は課税根拠に別々の理由があるようですが)納税者側からは「住民税の均等割がその役割を果たしている」と思うようです。しかし>ながら、事業税という税法がある以上、受益者負担ということで赤字法人も少しは負>担すべきであると考えます。

収入が減ったら、民間は、家庭はまず、何をするでしょう。
それに引き替え、自治体&国は、おとなしくて取れるところから取ろう、それで今まで通りの支出は賄える。
 全然違いますよね。経営者不在の民間の法人も同じような行動をとります。
で、お目付役がいないと、人間ってだめになっちゃうんですよね。
 お目付役をしっかり付けてなら、外形標準課税も俎上に乗せて議論することも必要になると思います。

Re:外形標準課税論議 投稿日:1126()

あるMLでの意見から。
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以前、東京地方税理士会では、「市民シンポジューム」をやりました。

その中で、事業税課税に対する反対意見がありました。
また、事業税については、政策的に非課税事業者もあって不公平であると。

事業税課税の根拠は、事業者がその地方の県道や橋など公共施設を利用して便益
を受けているからなどと言われますが、この利用状況にはいろいろあって、この
根拠では納得できないのが実感です。
当然、大企業が社員を含め便益を受けているということになります。
この意味では、東京都や大阪の増税策が銀行等に限ったことはうなずけます。

意見として言うと、事業税を廃止することなく、仮に事業税を増税するというならら、外形標準課税ではなく均等割りの増額という手段が考えられます。

しかし、財政支出を抑えるための全体の地方税制の見直しもしないで、ただ減収
だから増税という理由では、納得する人はいませんね。

日本の税制議論は、根本の問題を先送りして、目先だけの税制論(増税論)に終
始してきたもので、21世紀を迎えるに当たって、日本の税制改革の一環として議論する必要があります。

Re:外形標準課税論議 投稿日:1130()

あるMLでの意見から。
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> >自治省案は、赤字企業も課税されるため、雇用や経済に悪影響を及ぼす

> >景気の変動をあまり受けないよう地方の税収を安定させることなどが
> >目的で、自治省案は大変良くできている

> >全国で一本化して導入されないと、地方独自の外形課税が様々な形
> >で出てくる

> あれ〜〜っ、導入はもう決まっていて、後は方法論だけの議論を税調は
> 予定しているんですか?

> >政府税調自体は7月の中期答申で、早期導入の必要性を打ち出して
> >いる。なぜ逆戻りの議論をするのか

> あっ、やっぱりそうみたいですね。
> 税調会長は、新任したてなんで、好印象と好結果を出したいんですね。
> やっぱり雇用主には逆らえませんからね。

>  ところで、国民税制調査会は、何故無いんですか?
> えっ、日本では、それに変わるものが政党の税制調査会ですって。

 たしか、行革のときは国民行革審というのがありましたね。

>  ふーん、 支持率の低い政党でも国民を代表するんですか。
> え〜っ、支持率が低い政党も数集まれば高支持率政党と同じ結果
> になる!・・そんなちゃっこいことあり??

> それじゃ〜、税の専門家集団の税制調査会っていうのは、あるんですか?
>  え、税の専門家は、国税庁の通達に一喜一憂しているんですか。じゃ〜
> 法律論議に参加する資格なんて無いですね。

 日税連には税制審議会というのがあって、学者、マスコミ関係者、実務家など
で毎年「税制改正意見書」を出しているが、メンバーと日税連の執行部の姿勢に
問題があるんじゃなーい。

> それなら、国民の声は税を審議する場所には届かないじゃないですか。

 今は、一人一人が政府税調にmailで反対をしたりできるが、税制は難しい面が
あるしねー。やはり、民間の専門家団体たる税理士会がしっかりしないとね。
 時代が変わっているんだよねー。わかんねーだろうなー。

Re:外形標準課税論議 投稿日:1130()

あるMLでの意見から。
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作家の猪瀬直樹さんも税制はだめですね。
連合も反対。労使ともに反対。
自治労も反対(?)

経済界の方が対応まともですね。どうした税理士会代表の政府税調委員。声が聞こえない。寝ているのかな?

以下参考記事。
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<政府税調>「外形標準課税」導入案めぐり賛否で議論白熱 (毎日新聞-全文)
2000年11月28日(火)22時16分

 28日の政府税制調査会(会長・石弘光一橋大学長)で、自治省が2002年度の実施を目指している都道府県による法人事業税への「外形標準課税」導入案をめぐって、賛成、反対派委員が火花を散らした。石会長自身、「こんなに白熱した政府税調は初めて」と驚いたほどだった。

 自治省案は、赤字企業も課税されるため、今井敬経団連会長が「雇用や経済に悪影響を及ぼす」と企業の立場を「代弁」すると、政府の地方分権推進委員長などを務める諸井虔太平洋セメント相談役は「景気の変動をあまり受けないよう地方の税収を安定させることなどが目的で、自治省案は大変良くできている」と評価した。

 また、牧野力元通産事務次官が「特定の産業や事業活動が割を食うなど経済活動に中立的でない」と反対すると、「兆円単位の売り上げを上げている大企業を始め、3分の2の企業が赤字で課税されていないのはおかしいと思うのが世間一般の常識だ」(作家の猪瀬直樹氏)「全国で一本化して導入されないと、地方独自の外形課税が様々な形で出てくる」(貝原俊民兵庫県知事)などと応酬する具合で熱を帯びた議論が展開された。

 ただ、政府税調自体は7月の中期答申で、早期導入の必要性を打ち出している。この日も「なぜ逆戻りの議論をするのか」という素朴な問題提起もあったが、結局、来年の参院選などをにらんで自民党税調が下す“政治判断”に引きずられることになりそうだ。
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政府税制調査会(首相の諮問機関、会長・石弘光一橋大学長)は21日の総会で、来年度の税制改正に向けた本格的な検討作業に入った。今後は住宅ローン減税延長など一連の要望について議論を深めることになるが、この日は、法人事業税に外形標準課税の導入を目指すとした自治省案の導入に前向きな意見が多数を占めた。外形標準課税をめぐっては、主要経済団体が同日、導入反対のコメントを相次いで発表した。
 自治省の外形標準課税案は、企業が稼いだ所得への課税という現行方式に、人件費などを反映した事業規模額に応じて課税する外形標準課税を併用しようというもの。総会では「議論する時間が十分でない」とする慎重論があったが、「課税公平の原則から当然だ」などとする声が目立った。石会長も総会後「議論はこれからだが、ようやくゴールが見えた。ここで決めないと飛んで(消えて)しまう」と述べ、来月にまとめる答申への盛り込みに意欲を見せた。

 自治省側は外形標準課税の導入は増税ではないと説明しているが、業種や規模によって増税となる企業が出てくるうえ、全法人の3分の2にのぼる赤字法人の税負担は確実に増える。このため、自民党税制調査会では、来年の参院選もあって「企業の負担増につながりかねない税制を導入する景気環境にはない」(幹部)として、早期導入に慎重な意見が強い。

 経済同友会や日本商工会議所、全国中小企業団体中央会などの経済団体は21日、全都道府県に外形標準課税を導入するとした自治省案に反対するコメントを相次いで発表した。赤字法人に対する課税への警戒感が強いためで、「実質的な賃金課税となり、雇用の下請け化、アルバイト化を促進する」(日商)などと反論している。(23:56)