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日韓の会計検査院制度の違い、日本版「納税者権利憲章」、W杯日本代表、独立した「第三者機関」、防衛庁リスト問題、個人情報保護法案(5月29日から8月5日までの掲示板から)。


日韓の会計検査院制度の違い(2) 投稿者:長谷川 博  投稿日: 8月 5日(月)16時43分52秒


4.監査結果の責任
監査の結果、弁償責任がどこまで追求できるか。

(日本)
第5節 会計事務職員の責任 
第31条 会計検査院は、検査の結果国の会計事務を処理する職員が故意又は重大な過失により著しく国に損害を与えたと認めるときは、本属長官その他監督の責任に当る者に対し懲戒の処分を要求することができる。

(韓国)
第6節 監査結果の処理
第31条(弁償責任の判定等)@監査院は、監査の結果により別に法律が定めるところにより会計関係職員等(第23条第7号に該当した者中第22条第1項第3号及び第4号又は第23条第1号から第6号まで及び第8号から第10号に該当しない者の所属職員を除く。)に対する弁償責任の有無を審理・判定する。

5.監査報告書
権限の範囲が違うので、監査報告書の内容も違っている。

(日本)
第4節 検査報告 
第29条 日本国憲法第90条により作成する検査報告には、左の事項を掲記しなければならない。
1.国の収入支出の決算の確認
2.国の収入支出の決算金額と日本銀行の提出した計算書の金額との不符合の有無
3.検査の結果法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項の有無
4.予備費の支出で国会の承認をうける手続を採らなかつたものの有無
5.第31条及び政府契約の支払遅延防止等に関する法律第13条第2項並びに予算執行職員等の責任に関する法律第6条第1項(同法第9条第2項において準用する場合を含む。)の規定により懲戒の処分を要求した事項及びその結果
6.第32条(予算執行職員の責任に関する法律第10条第3項及び同法第11条第2項において準用する場合を含む。)並びに予算執行職員の責任等に関する法律第4条第1項及び同法第5条(同法第8条第3項及び同法第9条第2項において準用する場合を含む。)の規定による検定及び再検定
7.第34条の規定により意見を表示し又は処置を要求した事項及びその結果
8.第36条の規定により意見を表示し又は処置を要求した事項及びその結果

(韓国)
第8節 監査報告

第41条(検査報告事項)憲法第99条の規定により作成する検査報告には、次の事項を掲記しなければならない。
1.国家の歳入・歳出の決算の確認
2.国家の歳入・歳出の決算金額と韓国銀行が提出する決算書の金額との符合与否
3.会計検査の結果法令又は予算に違背した事項及び不当事項の有無
4.予備費の支出として国会の承認を得ないものの有無
5.有責判定及びその執行状況
6.懲戒又は問責処分を要求した事項及びその結果
7.是正を要求した事項及びその結果
8.改善を要求した事項及びその結果
9.勧告又は通報した事項及びその結果
10.その他監査院が必要であると認めた事項

6.国民の審査請求
国民からの審査請求の可否。

(日本)
規定なし。

(韓国)
第3章 審査請求
第43条(審査の請求)@監査院の監査を受ける者の職務に関する処分その他行為に関して利害関係ある者は、監査院にその審査の請求をすることができる。

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以上、1年前に整理した比較概要を簡単に紹介したが、さらに日本の会計検査院のあり方、総務庁の行政監察の限界など問題点の分析が必要である。




日韓の会計検査院制度の違い(1) 投稿者:長谷川 博  投稿日: 8月 5日(月)16時41分44秒

日本の会計検査院と韓国の監査院の比較(概要)2001年8月         長谷川 博

−比較概要メモ
@日本の会計検査院は会計監査の権限しかないが、韓国の監査院は行政の監察権限も有する。
A検査結果、その弁償等責任の追及に違いがある。
B韓国の行政機関には監査院に通報協力する責任がある。
C韓国では、国民から監査院に審査請求する権利が認められいる。

1.地位・組織
・日本の会計検査院も韓国の監査院も内閣から独立した地位にある。

(日本国憲法)
第90条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
(注)検査官は、両議院の同意を経て内閣が任命し、天皇が認証する。

(韓国憲法)
第97条 国の歳入・歳出の決算、国家及び法律が定めた団体の会計検査並びに行政機関及び公務員の職務に関する監察を行うため、大統領所属の下に監査院を置く。
(注)院長は、国会の同意を得て大統領が任命する。

・権限とも関係して、日本の組織は大きくない。
(日本)

第12条 事務総局は、検査官会議の指揮監督の下に、庶務並びに検査及び審査の事務を掌る。

(韓国)
第16条(職務及び組織)@院長の指揮・監督の下に会計検査・監察・審査決定及び監査院に関する行政事務を処理するために監査院に事務処を置く。

2.権限
日本は国の決算の監査に限られているが、韓国では行政機関及び公務員の監察の権限がある。

(日本)
第20条 会計検査院は、日本国憲法第90条の規定により国の収入支出の決算の検査を行う外、法律に定める会計の検査を行う。

第2節 検査の範囲 
第22条 会計検査院の検査を必要とするものは、左の通りである。
1.国の毎月の収入支出
2.国の所有する現金及び物品並びに国有財産の受払
3.国の債権の得喪又は国債その他の債務の増減
4.日本銀行が国のために取り扱う現金、貴金属及び有価証券の受払
5.国が資本金の2分の1以上を出資している法人の会計
6.法律により特に会計検査院の検査に付するものと定められた会計

(韓国)
第20条(任務)監査院は、国家の歳入・歳出の決算検査並びにこの法律及び他の法律が定める会計を常時検査・監督してその適正を期し、行政機関及び公務員の職務を監察して行政運営の改善向上を期する。
(1)第2節 決算の確認及び会計検査の範囲
第21条(決算の確認)監査院は、会計検査の結果により国家の歳入・歳出の決算を確認する。

第22条(必要的検査事項)@監査院は、次の事項を検査する。
1.国家の会計
2.地方自治団体の会計
3.韓国銀行の会計及び国家又は地方自治団体が資本金の2分の1以上を出資した法人の会計
4.他の法律により監査院の会計検査を受けるように規定された団体等の会計

(2)第3節 職務監察の範囲
第24条(監察事項)@監査院は、次の事項を監察する。
1.政府組織法その他法律により設置された行政機関の事務及びそれに所属した公務員の職務
2.地方自治団体の事務及びそれに所属した地方公務員の職務
3.第22条第1項第3号及び第23条第7号に規定された者の事務及びそれに所属した役員及び監査院の検査対象となる会計事務と直接又は間接に関連がある職員の職務
4.法令により国家又は地方自治団体が委託し、又は代行させた事務及びその他法令により公務員の身分を有し、又は公務員に準ずる者の職務

3.通報及び協力
(日本)
規定なし。

(韓国)
第5節 通報及び協力
第29条(犯罪及び亡失・毀損等の通報)@第22条及び第23条の規定により監査院の監査を受ける機関等の長は、次の各号の事項があるときは、遅滞なく所属長官又は監督機関の長を経由してその事項を監査院に通報しなければならない。
1.会計関係職員及び第24条の規定により監査院の監察を受ける者の職務に関する犯罪の事実が発見されたとき及び懲戒処分があるとき
2.現金・物品・有価証券その他の財産を亡失又は毀損した事実が発見されたとき

(次ページへ続く)

RE:会計検査院の重要性 投稿者:堀田清司  投稿日: 8月 3日(土)13時54分29秒

>(日経新聞社説7/30) 会計検査改革の灯消すな
・・・1997年に国会法と会計検査院法が改正され、国会が直接検査院に検査を依頼する仕組みや、検査院が政策評価に踏み込む有効性の検査を実施する規定が盛られた。

  やることが手ぬるいですね。
  今のままだと、会計検査院は、(切除手術をしても人間は死なない)盲腸みたいなもので、政官財の癒着や不正は取締れない。
  国の借金は600兆円。
  近頃、道路公団の民営化を巡って論議されているが、先だって発表された、3キロ(トンネル内は1キロ)ごとに設置する電話機の代金が270万円(?)、「冗談じゃない。まだ実施してなかったの?」という新鮮な驚きもあるが、「高校生だって60%は持っているという、携帯電話が幾らで手に入る時代になっているか知っているの?」と聞いてみたくなる。
  これは、政官財の癒着ぶりを露呈しているだけだ。
  外務省がらみの不祥事も連続して発覚しているし、特殊法人に限らず一時が万事、日本国内不正だらけだ。
  会計検査院の連中は、定年退職後の天下り先を大蔵省など他の省庁に頼まなければならないので、厳しい監督ができない、などという(根強い)噂もある。参ったね。

  会計検査院は、憲法第90条(A、会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める)と定められ、内閣から独立した行政機関だから、制度的には、各省の設置法で権能が定められる省よりは、本来上の機関として位置づけられているのに、権限が骨抜きにされて、諸外国の会計検査院と比べて不十分だから、会計検査院法を改正して必要な権能を与える必要がある。

  つまり、省に昇格させて大臣(国民的な応援団長)を任命し、職員にもっと権威と権限を持たせて、人材(現在1200人:人件費などを含めて予算200億円?)も予算も4倍ほど増やして、ふさわしい給料を支払い、国民の税金が無駄なく適正に使われているかどうか、もっと厳しく監督すべきだと思います。

  フランスでは、政教分離がきちっとしているだけでなく、会計検査院は、「予算法律の執行監督につき国会と政府を補佐する」、と独立した行政機関であることが明記されており、日本の財政省主計局と対等の権威をもち、国や地方の会計検査も厳格で、国民の信頼や尊敬の念を受けており、大統領のほとんどは、会計検査院出身者ではありませんか?

  ところで、金融庁は2日、全国の民間金融機関の2002年3月末の不良債権(金融再生法開示債権)の残高が52兆4420億円で、前年同期に比べて9兆4570億円増えたと発表しましたが、財務省や金融庁は機能不全を起こしているとしか思えません。

  お隣の韓国では、銀行の幹部を逮捕したり、更迭して、30代・40代の優秀な人たちと交代して、日本より遅く発生した、金融危機を早々に脱しています。

  長谷川先生は、ホームページに韓国についての記事を書いておられますが、会計検査院の問題も含めて、これらの事情を説明していただけるとうれしく思います。

会計検査院の重要性 投稿者:長谷川 博  投稿日: 8月 1日(木)02時11分04秒

(日経新聞社説7/30)
 会計検査改革の灯消すな

 民間の学者から初めて会計検査院長になった金子晃院長が30日、退官する。検査院はもっと財政支出や政策実施への監視を強めるべきだという社会の要請を背景に、金子院長は会計検査に次々と新風を吹き込んだ。内部の戸惑いや外部とのあつれきも少なくないが、透明で効率的な政府を実現するために、ともされた改革の灯を消すべきでない。
 会計検査院は、国民の税金が無駄なく適正に使われているかを監督する国の会計監査機関である。憲法で国の決算検査を毎年実施することが義務づけられているが、ともすれば年1回の報告書提出で役目は終わりとの意識が強かった。ところが、1997年に国会法と会計検査院法が改正され、国会が直接検査院に検査を依頼する仕組みや、検査院が政策評価に踏み込む有効性の検査を実施する規定が盛られた。硬直化した行財政運営に風穴を開けてほしいという国民の要求にこたえたものだ。
 このような状況で検査院に入った金子院長が掲げた改革は3つある。第1はシステム監査の実施である。昨年外務省の不正経理事件が発覚した。その反省から不当な会計処理の指摘だけでなく、不正を生み出す予算執行や内部監査の態勢も検査する方針を明確にした。
 今年度から内閣官房報償費について、政府は運用ルールを初めて明文化した。報償費の使い方にフリーハンドを主張する内閣と使途の適正化を求める検査院との折衝の末、使途の適正さを内部でチェックできる仕組みをつくるべきだという検査院の主張をいれた結果だ。
 第2は政策への切り込みである。検査院は、国の損害につながらない限り口をはさまないとの姿勢をとってきた。しかし、いま損害は発生していなくても将来の国民負担が生じることもある。地方空港の極めて甘い需要予測や特殊法人への300兆円の財政投融資の返済リスクなど、実損がなくても政策内容や決定過程を問題にする指摘が増えた。
 3番目は官公需契約への競争原理導入である。官庁側の競争阻害行為を指摘することに力を入れている。
 従来の殻を破る検査には内外から抵抗がある。トップの交代で改革が後退することは許されない。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20020729MSIMI097929072002.html
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日本の会計検査院の権能が見直されなければならない。
目立たない機関ではあるが、国家の政治、経済にとって極めて重要な役割が求められる機関である。

しかし、日本の会計検査院の権能には多くの問題がある。近いうち、温めていたこの問題に迫るつもりである。

日本版「納税者権利憲章」(2) 投稿者:長谷川 博  投稿日: 7月23日(火)01時39分38秒

「税務行政における国民の権利利益の保護に資するための国税通則法の一部を改正する法律案」

 国税通則法(改正後の姿)       
  第一章 通則    

 第一節 総則
(目的)第一条 この法律は、国税についての基本的な事項及び共通的な事項を定め、税法の体系的な構成を整備し、かつ、国税に関する法律関係を明確にするとともに、税務行政の運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の納税義務の適正かつ円滑な履行及び国民の権利利益の保護に資することを目的とする。

(第二条〜第四条 略)

 第一節の二 税務行政の基本理念等

(税務行政運営の基本理念)
第四条の二 税務行政の運営は、国民の納税義務の適正かつ円滑な履行が確保されるよう、公正を旨として行われなければならない。
2 国税当局は、その職務の執行に当たっては、国民のプライバシーを尊重しなければならない。
3 国税当局は、税務行政に関する国民の理解を得るため、必要な情報の提供を行うとともに、税務行政に関する国民の意見、苦情等に誠実に対処しなければならない。
4 国税庁、国税局、税務署及び税関並びに国税不服審判所の当該職員は、その職務の執行に当たっては、国民の権利利益の保護に常に配慮するとともに、国民が納税に関して行った手続は、誠実に行われたものとして、これを尊重することを旨としなければならない。
(税務行政運営の基本方針)
第四条の三 国税庁長官は、前条に定める税務行政運営の基本理念にのっとり、税務行政の運営の基本となる方針を定め、これを公表しなければならない。

(納税の主体たる国民に対する文書の作成及び普及)
第四条の四 国税当局は、第四条の二に規定する事項及び納税の主体たる国民の権利利益の確保のために必要な事項の概要に関する文書を作成し、普及しなければならない。
2 前項の文書は、納税の主体たる国民の立場に立って、平易な表現を用いたものでなければならない。

(中略)
  第二章 国税の納付及び徴収
 (第一節〜第三節 略)

 第四節 質問又は検査の事前通知等

(税額の確定に係る調査等のための質問又は検査の事前通知等)
第三十三条の二 国税庁、国税局、税務署又は税関の当該職員は、納付すべき税額の確定に係る調査等のための所得税法第二百三十四条第一項その他の政令で定める国税に関する法律の規定による質問又は検査(以下この条及び次条においてそれぞれ単に「質問」又は「検査」という。)をしようとする場合には、質問又は検査をする日の十四日前までに、その相手方に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。ただし、検査をしようとする物件が隠滅される等調査の目的を達成することが著しく困難になると認めるに足りる相当な理由がある場合は、この限りでない。
 一 相手方の氏名(法人については、名称)及び住所又は居所
 二 当該職員の氏名及び所属する官署
 三 調査を必要とする理由
 四 質問又は検査の根拠となる法令の条項
 五 質問をする事項又は検査をする物件
 六 質問又は検査をする日時及び場所
 七 次項に規定する変更の申出に関する事項
2 前項の通知を受けた者は、当該通知をした国税庁、国税局、税務署又は税関の当該職員に対して、質問又は検査をする日時又は場所の変更を申し出ることができる。
3 国税庁、国税局、税務署又は税関の当該職員は、第一項ただし書に規定する場合において、質問又は検査をしようとするときは、その相手方に対し、同項第一号から第五号まで及び第八号に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。

(税額の確定に係る調査の結果に関する情報の提供)
第三十三条の三 国税庁長官、国税局長、税務署長又は税関長は、当該職員が質問又は検査を行った場合には、当該質問又は検査の相手方に対し、当該質問又は検査に係る調査の結果に関する情報を提供するものとする。

(以下、略)

日本版「納税者権利憲章」 投稿者:長谷川 博  投稿日: 7月23日(火)01時37分56秒

日本版「納税者権利憲章」を含む「国税通則法改正案」
野党3党共同で議案提出(7月12日)

(TCフォーラム会報7/17より)
 民主党、日本共産党、社民党の野党3党は、さる7月12日、「税務行政における国民・納税者の権利保護に資するための国税通則法の一部を改正する法律案」を衆議院に提出しました。
 私たちTCフォーラムは、今国会において国税通則法改正案を野党4党共同により提出・成立を図るべく運動を続けてまいりました。これを受け、民主党・海江田万里衆議院財務金融委員長筆頭理事が民主党の討議を受け、全野党による共同提案を各野党に呼びかけました。これに応え日本共産党、社民党、自由党がそれぞれ党内手続きに入りました。
 日本共産党、社民党は野党共同提案について党議決定をしましたが、残念ながら自由党は主旨には賛成だが共同提案に同調しかねるとの結論に至りました。そのため、今国会において審議日程に入れるぎりぎりの7月10日に提出することができず、野党3党によりようやく7月12日に提出することができました。前通常国会における提案が民主党1党だけであったことと比べ、民主党の財務金融委員会理事をはじめ日本共産党、社民党の理事が提出者に名前を連ねたことは、大きな前進です。
 なお、今国会に提出された「国税通則法一部改正案」及び提出理由等は、前通常国会において民主党・河村たかし衆議院議員ほかにより提出された改正法案と同じです。
http://www.h-hasegawa.net/tsusoku-dpj.htm
(次ページへ)

W杯日本代表、ありがとう 投稿者:長谷川 博  投稿日: 6月19日(水)11時27分07秒

 昨日のW杯日本代表の結果を受けて、新聞各紙の社説はほぼ同じように日本代表を称えていた。その中で、日本の経済低迷の打開策と関連付けた(?)毎日の社説を紹介する。

W杯8強ならず よくやった、みんなで拍手を

 日本がベスト16で、ワールドカップ(W杯)の戦いを終えた。最後は、悔しい敗北だった。しかしこれからの日本に希望の灯をともす戦いだった。久しぶりに列島が活気づき、みんなが素晴らしい夢を見た。選手はじめ、すべての関係者に感謝したい。
 若い日本チームの戦いは実に見事だった。トルコ戦は、さらに上に行ける可能性を感じさせただけに残念だったが、初めてW杯に勝ち、1次リーグを突破した価値が失われるものではない。サッカーに関しては日本は発展途上国である。その日本がベスト16。やはり歴史的快挙なのである。
 W杯は、ほとんどの国・地域が夢中になるサッカーの頂点となる大会であり、世界中からサポーターが集まる。あらゆるイベントの中でも最大級の祭典だ。
 しかし多くの日本人は、日韓共催の今大会で初めて、その意味を理解したのではないか。
 テレビの視聴率は、軒並み跳ね上がった。外国チーム同士の対戦でも驚くほど高い。スリリングな戦いを目の当たりにし、またキャンプなどでの交流を通じて外国チームが身近になったことが数字を押し上げたのだろう。試合のたびに会場や繁華街などが、日本の青いユニフォームで埋まり、勝利には見知らぬ同士が肩を組んで喜びあった。空前のことだ。
 選手だけでなく、たくさんの人たちが、このW杯で極めて大きな経験をした。その経験を、これからの日本チーム、そして、日本社会のために生かしていきたい。
 今あらゆる分野で、国際化、グローバル化が進んでいる。世界の中での戦いが当たり前になっている。世界と立派に戦っている日本の企業やノーベル賞学者もいる。しかし、荒波にもまれて苦労している分野も少なくない。
 日本サッカーの挑戦が参考になるのではないか。スポーツは、結果がはっきりと出る。何が良くて何が悪いのかをトレースできる。あらゆる国が全力を挙げて取り組むW杯に、日本は、「短期間にこれだけ急速に進歩した例は知らない」と世界を驚かせる成果を上げた。発展途上の分野で戦う際の良いモデルになるように思える。
 何が、原動力になったのか。おそらく答えは、一つではないだろう。これから十分に分析してほしいが、関係者が口をそろえるのは世界を肌で知ることの重要性だ。Jリーグが発足し、選手がプロ化したことが大きい。南米や欧州の多くの有能な指導者や選手が来日し、一緒にプレーした。日常的に世界を感じる環境が出現した。
 仕上げはトルシエ監督だ。時にエキセントリックに思えるほど情熱的に振舞った。日本のナアナア主義や年功序列的上下関係を壊し新しい空気を導入した。評価が分かれるところもあろうが、日本人には難しかったのではないか。
 日本の戦いは終わったが、韓国は勝った。アジアのためにも、さらなる活躍を期待したい。W杯はこれから佳境に入る。最後まで最高の舞台を用意し、主催国としての責任を果たしたい。
(毎日新聞 06-18-23:53)
http://www.mainichi.co.jp/eye/shasetsu/200206/19-1.html


独立した第三者機関 投稿者:長谷川 博  投稿日: 6月13日(木)11時00分34秒

(asahi.comより)
人権擁護法案の今国会成立見送り 与党3党が合意

 政府の人権擁護法案をめぐり、与党3党は12日、今国会での成立を見送ることで合意した。新設される人権委員会が法務省の外局に置かれる点や、メディア規制の色が濃いことなどに対し、各界の異論が強く、秋に予定される臨時国会以降で成立をめざすのが現実的との判断に傾いた。
 与党は当初、「法務省の外局とすることが適当かどうか、3年後に見直す」との付帯決議をつけるなど、反対論に一定の配慮をしたうえで今国会で成立させることを検討していた。しかし、参院本会議で法案の趣旨説明があった後も批判はおさまらず、「今国会で強行する必要はない」との声が強まっていた。(10:23)
http://www.asahi.com/politics/update/0613/006.html

 人権委員会の位置づけについて、韓国では昨年11月に独立性の高い人権救済機関が導入されている。この人権委員会の委員は、11名で国会選出4名、大統領指名4名、大法院(最高裁)指名3名で、その性格は、立法、行政、司法のいずれにも属さない独立機関とされている(朝日新聞6月12日朝刊15参照)。
 韓国では、行政に対する苦情処理機関として独立した「苦衷処理委員会」(韓国版オンブズマン)が設置されており、さらには、税務行政に対する苦情救済機関として「納税者保護担当官制度」も設置されているなど第三者性、独立性を重視し、権限ある処理ができる制度となっている(このホームページで取り上げているので参照されたい。)。
 日本では、行政を監視する第三者機関ができにくい体質があるが、それは官僚の抵抗とそれを支える与党のぬるま湯的体質さらには第三者機関により存在価値が薄められることになると危惧するマスコミ等の勇気のなさが原因しているように思われる。日本でもNPOなどこれを求める市民の運動が広まらなければならないだろう。

防衛庁のリスト作成 投稿者:長谷川 博  投稿日: 5月31日(金)22時51分57秒

(毎日社説から)
2002年05月31日
防衛庁リスト ここでごまかすと後を引く

 防衛庁が情報公開を求めた141人全員の身元を調べてリストにしていた問題は、国民の思想・信条にまで立ち入って調査することに、同庁が人権上何の疑問も抱かない体質を持っていることを示した。そんな防衛庁に真相究明を進める資格はない。
 防衛庁の28日の発表によると、リストを作ったのは海上幕僚監部情報公開室の3佐で、「あくまで個人の発意で、上司の指示はなかった」(柳沢協二官房長)という。にわかに信じがたい。
 日本の役所は、ささいなことも上司の許可を取り付ける。この硬直さが、むしろ問題とされるくらいだ。とりわけ軍隊は、上意下達によって組織の命脈が保たれる。そこで長い間務めた幹部1人の意思で、141人もの追跡調査を行うだろうか。中谷元・防衛庁長官が29日の国会答弁で「私も本当に個人かなという気がしている」と首をかしげたのもうなずける。
 仮に個人の行為としても、旧姓や所属団体まで記したリストを必要とし、当然と思う雰囲気があったことは間違いない。柳沢官房長も「資料を使っていろんな説明をしたと思う。(情報公開の決裁で)私も『どういう方なんだろう』と口にすることはある。判断基準ではないが」と認めた。
 リストは庁内の情報公開担当者ら8人に渡った。4人は廃棄したが4人は保管していた。個人情報の取り扱いを定めた法律に反するからやめよと注意した幹部は、誰ひとりいなかった。
 防衛庁は有事法案の必要性について、日本への武力攻撃に立ち向かう自衛隊が国民の生命や財産などを守るには、新たな法制がないと円滑に動けないからだと説明してきた。守るべき対象に、憲法の保障する「思想・良心の自由」は含まないつもりなのか。基本的な人権意識が欠落したまま、国民を守りますと力んでみても、説得力に欠ける。
 真相の調査を防衛庁が始めた。不祥事を起こした当事者が身内を調べれば、必ず甘くなったり、隠し事が出る。外務省の悪例を忘れてはいけない。中国・瀋陽総領事館での亡命希望者連行事件で、自ら調査に当たったが、次々新事実が暴露され、逆に信頼を損なった。福田康夫官房長官は30日、防衛庁に徹底調査を指示したが、少なくとも防衛庁ではない、外部の第三者に委ねる問題である。
 国会はリストを作った3佐らを国会に招致するなど、国政調査権をもっと積極的に活用すべきだ。文民統制の立場からも、国会には真相究明の責任がある。
 情報公開法には、野党や市民団体の念願した「国民の知る権利」が明記されなかった。昨年4月の公開スタートを前に、外務省や旧郵政省は大量の文書を廃棄した。それどころか、本来、開かれた政府を目指すはずの制度が、逆に国民監視の材料に使われた。主管官庁の総務省は大いに反省しなければならない。他省庁でもこうした違法行為がないかを徹底的に調べるとともに、何のための制度かを再教育すべきである。
http://www.mainichi.co.jp/eye/shasetsu/200205/31-1.html

 このような事案は、防衛庁だけではなく他の官庁でも行われていると思われる。
要は、行政をコントロールする法整備の必要性に対する立法府の認識如何ということであろう。

個人情報保護法 投稿者:長谷川 博  投稿日: 5月29日(水)23時49分45秒

防衛庁、情報公開請求者の身元を調査 思想なども記載
 防衛庁が、情報公開法に基づいて同庁に公開請求した142人の個人情報を独自に調べ、それらを記載したリストを作成していたことが28日分かった。請求時に記入の必要のない職業や生年月日、思想信条に関することも記載されており、複数の関係部署で回覧されたという。防衛庁は同日の記者会見で事実関係を認めるとともに、関係者を処分する方針を明らかにした。今国会で審議中の個人情報保護法案などとの兼ね合いで問題になりそうだ。
 防衛庁によると、問題のリストを作成したのは、今年3月まで海上幕僚監部情報公開室に所属していた3等海佐(48)。3佐は、情報公開法が施行された昨年4月から今年3月までの間に、公開を求めた請求者全員142人について、所属している会社名や市民グループ名、役職、一部については生年月日などの個人情報を調べ、それらを記載したリストを作成していたという。
 中には、「元自衛官」「反戦自衛官」などの記載もある。
 そうした情報は、請求者が窓口に来た際の聞き取りや、庁内のほかの部署の担当者から聞いて得ていた。請求者が著名人の場合はインターネットなどで調べるなどして収集していたという。
 また昨年11月と今年3月に、内局、陸上自衛隊、航空自衛隊の情報公開室の担当者、関係業者や隊員の身辺調査などを行う中央調査隊の関係者ら7人にリストを手渡していた。
 リストを作成した理由について防衛庁は、「個人的な関心や業務の効率化」としながらも、3佐の上司が、請求者がどんな人物でどのような背景で請求しているのか、などをたずねることがしばしばあったと説明。こうした質問に答えるため、個人情報を収集していた可能性もある。
 しかし「思想信条によって、公開か非公開かの判断が影響されたことはない」としている。
 だが、「行政機関の保有する電算処理に係る個人情報保護法」では、公務員などが業務に関して知り得た個人情報を他人に知らせ、不当な目的に使用してはならないと規定し、個人情報のファイルは業務に必要な場合に限って保管が認められている。防衛庁は「同法に抵触する可能性がある」と認めたうえで、「業務の遂行上必要との認識を超えている」と述べた。(12:03)
http://www.asahi.com/national/update/0528/009.html

 情報公開請求者の個人情報の保護を保障する制度(行政機関や職員への処罰規定)が存在しない「個人情報保護法案」の問題点などが明らかになっった事件が生じた。
 こういった事件が起きないと法案のもつ問題点や危険性に気がつかないとしたら、国民の情報が一方的に管理されてきている現代の情報化時代に生きるための人権意識(感覚)が問われている(麻痺している)と言っても過言ではないであろう。
 本来、情報公開法と個人情報保護法は、整合性をもって同時に制定されていなければならなかったものである。
 参照 http://www.asahi.com/national/kjhh/kojin.html