韓国国税基本法(抜粋)

第7章の2 納税者の権利
第81条の2(納税者の権利憲章の制定及びその交付)
 @国税庁長は、第81条の3乃至第81条の11が規定した事項その他納税者の権利保護に関する事項を含む納税者権利憲章を制定し告示しなければならない。(2007.12.31改正)
 A税務公務員は、次の各号の一に該当する場合には、第1項の規定による納税者権利憲章の内容が収録された文章を納税者に交付しなければならない。
 1.租税犯処罰節次法の規定による犯則事件(以下「犯則事件」という。)に対する調査をする場合
 2.法人税の決定又は更正のための調査など、賦課処分のために実地調査をする場合
 3.事業者登録証を交付する場合
 4.その他大統領令で定める場合

第81条の3(納税者の誠実性の推定)
 税務公務員は、納税者が第81条の第2項の各号に何れに該当する場合を除いては、納税者が誠実であり、納税者が提出した申告書等が真実であると推定しなければならない。(2006.12.30新設)

第81条の4(税務調査権の濫用禁止)
 @税務公務員は、適正でかつ公平な課税の実現のため、必要最小限の範囲内で税務調査を行わなければならないし、他の目的などのため調査権を濫用してはならない。(2006.12.30条文番号改正)
 A税務公務員は、次の各号の一に該当する場合でなければ、同じ税目及び同じ課税期間に対し、再調査をすることができない。(2007.12.31改正)
 1.租税脱漏の嫌疑が認められるような明白な資料がある場合
 2.取引の相手方に対して調査が必要な場合
 3.二以上の事業年度に関連して誤りがある場合
 4.第65条の第1項第3号(第66条及び第81条で準用する場合を含む。)による必要な処分の決定によって調査をする場合
 5.その他、第1号から第4号までに類似する場合であって、大統領令で定める場合

第81条の5(税務調査において援助を受ける権利)
 納税者は、犯則事件の調査、所得税・法人税・付加価値税の決定又は更正のための調査等その他大統領令で定められる賦課処分のための実地調査を受ける場合に、弁護士・公認会計士・税務士又は租税に関して専門知識をもつ者で大統領令で定める者に調査に立ち会わせ、意見を陳述させたりすることができる。(2006.12.30条文番号改正)

第81条の6(税務調査対象の選定)
 @税務公務員は、次の各号の一に該当する場合、定期的に申告の検証をするために対象を選定(以下、「定期選定」という。)し、税務調査をすることができる。この場合、税務公務員は、客観的な基準に沿って公正にその対象を選定しなければならない。(2007.12.31改正)
 1.国税庁長官が納税者の申告内容対する定期的な誠実度分析結果、不誠実な嫌疑があると求められた場合
 2.最近の4課税期間(又は4事業年度)以上同一税目の税務調査を受けなかった納税者に対し、業種、規模などを考慮し大統領令が定めたところにより申告内容が適正であるかを検証する必要性がある場合(2007.12.31改正)
 3.無作為による標本調査をしようとする場合
 A税務公務員は、第1項の規定により定期選定による調査以外に次の各号の一に該当する場合には、税務調査を実施することができる。(2006.12.30改正)
 1.納税者が税法で定められた申告書、税金計算書又は計算書類等の作成・交付・提出又は支給明細書の作成・提出などの納税協力義務を履行しなかった場合(2007.12.31改正)
 2.無資料による取引、偽装・架空取引など取引の内容が事実と異なる嫌疑がある場合
 3.納税者に対し具体的な脱税通報がある場合
 4.申告内容に脱漏や誤謬の嫌疑が認められるだけの明白な資料がある場合
 B税務公務員は、課税官庁の調査決定により課税標準と税額が確定される税目の場合、課税標準と税額を決定するため税務調査をすることができる。(2006.12.30改正)
 C税務公務員は、次の各号の要件をすべて満たす者に対しては、第1項の規定による税務調査の実施をしないことができる。但し、客観的な証憑資料により過少申告したことが明白である場合はその限りではない。(2006.12.30改正)
 1.業種別収入金額が大統領令の定める金額以下である事業者
 2.帳簿記帳などが大統領令の定める要件を満たす事業者
 
第81条の7(税務調査の事前通知及び延期申請)
 @税務公務員は、国税に関する調査のため当該帳簿・書類その他の物件などを調査する場合には、調査を受ける納税者(納税者が第82条の規定により納税管理人を定め管轄税務署長に申告した場合には、納税管理人を称す。以下この条に同じ。)に調査開始10日前に調査対象税目及び調査事由その他大統領令で定められる事項を通知しなければならない。但し、犯則事件に対し調査する場合又は事前通知によって重大な証拠隠滅などのおそれがあり調査目的を達成できないと考えられる場合にはその限りではない。(2006.12.30改正)
 A第1項の規定により通知を受けた納税者が、天災地変その他大統領令で定められる理由により調査を受けることが困難な場合には、大統領令の定めにより管轄税務官署の長に調査の延期を申請することができる。(2006.12.30改正)
 B第2項の規定により延期申請を受け取った管轄税務署長は、延期申請の承認要否を決定してからその結果を通知しなければならない。(2006.12.30新設)

第81条の8(税務調査期間)
 @税務公務員は、調査対象の税目・業種・規模、調査難易度などを鑑み税務調査期間が最小限になるようにしなければならない。但し、次の各号のいずれに該当する場合には、税務調査期間を延長することができる。(2006.12.30新設)
 1.納税者が帳簿・書類などの隠匿、提出遅延、提出拒否など調査を忌避する行為が、明白である場合
 2.取引先の調査、取引先の現地確認及び金融取引の現地確認が必要な場合
 3.税金脱漏の嫌疑が捕捉されたか、調査過程において「租税犯処罰手続法」第1条の規定による租税に関する犯則事件として調査類型が転換された場合
 4.天災地変、労働争議により調査が中断されるなど大統領令が定める事由に該当する場合
 A税務公務員は、第1項の但し書きの規定により税務調査期間を延長しようとする場合は、延長の事由と期間を納税者に文書をもって通知しなければならない。

第81条の9(税務調査における結果通知)
 税務公務員は、犯則事件の調査、法人税の決定又は更正のための調査など大統領令で定める賦課処分のための実地調査終了後には、その調査結果を書面で納税者に通知しなければならない。但し、廃業など大統領令が定める場合には、その限りではない。(2006.12.30条文番号改正)

第81条の10(秘密保持)
 @税務公務員は、納税者が税法で定める納税義務を履行するために提出した資料や国税の賦課または徴収を目的で業務上取得した資料(以下、「課税情報」という。)などを他人に提供又は洩らしたり目的外の用途として使用してはならない。但し、次の各号の一に該当する場合には、その使用目的に合う範囲内において納税者の課税情報を提供することができる。(2006.12.30条の番号改正)
 1.地方自治団体等が法律の定める租税の賦課または徴収の目的などに使用するため課税情報を要求する場合
 2.国家機関が租税争訟又は租税犯の訴追目的のため課税情報を要求する場
  合
 3.裁判所の提出命令又は法務官が発付した令状により課税情報を要求する場合
 4.税務公務員の相互間に国税の賦課・徴収又は質問・検査上の必要により課税情報を要求する場合
 5.統計庁長が国家統計作成の目的で課税情報を要求する場合(2009.2.6新設)
 6.他の法律の規定により課税情報を要求する場合(2009.2.6号番号改正)
 A第1項第1号第2号第5号及び第6号により、課税情報の提供を要求する者は、文書によって当該官署の長にこれを要求しなければならない。(2009.2.6改正)
 B税務公務員は、第1項及び第2項の規定に反する課税情報の要求を受けた場合には、これを拒否しなければならない。(2006.12.30改正)
 C第1項の規定により課税情報を知りえた者は、これを他人に提供又は洩らしたり、その目的以外の用途として使用してはならない。(2006.12.30改正)
 Dこの条の規定により課税情報を提供され知りえた者のうち公務員ではない者は、「刑法」その他の法律による罰則の適用においてこれを公務員とみなす。(2006.12.30改正)

第81条の11(情報の提供)
 税務公務員は、納税者が納税者の権利の行使に必要な情報を要求する場合、これを迅速に提供しなければならない。(2006.12.30条文番号改正)

第81条の12(課税前適否審査)
 @次の各号のいずれの一に該当する通知をもらった者は、その通知をもらった日から30以内に当該税務署長又は地方国税庁長へ通知内容に対する適法性の可否に関して審査(以下この条では「課税前適否審査」という)請求ができる。但し、法令と関連し国税庁長の有権解釈を変更しなければならないことや、新しい解釈が必要な場合等、大統領令が定めている事項に対しては、国税庁長にこれを請求することができる。(2008.12.26改正)
 1.第81条の9の規定による税務調査結果に対する書面通知(2006.12.30改正)
 2.その他大統領令が定める課税予告通知 
 A次の各号の一に該当する場合は、第1項の規定が適用されないようにする。
 1.国税徴収法第14条が規定している納期前徴収の事由があるか、税法に規定されている随時賦課の事由がある場合(2006.12.30改正)
 2.税務犯則事件を調査する場合
 3.税務調査結果通知及び課税予告通知をする日から国税課税除斥期間の満了日までの期間が3ヶ月以下である場合(2006.12.30改正)
 4.その他大統領令が定める場合
 B課税前適否審査請求を受理した税務署長、地方国税庁長又は国税庁長は、各々国税審査委員会の審査を経て決定をし、その結果を請求があった日から30日以内に請求人に通知しなければならない。(2008.12.26改正)
 C前適否審査請求に対する決定は、次の各号による
 1.請求に理由がないと認められた場合 :採択しないという決定。
 2.請求に理由があると認められた場合 :採択する決定。但し、請求の一部に理由があると認められた場合は、一部採択の決定をする。
 3.請求期間が経過したか、補正期間ないに補正をしない場合 :審査しないという決定。(2007.12.31改正)
 D第58条、第59条、第61条第3項、第62条第2項、第63条、第64条第2項及び第65条第4項の規定は、課税前適否審査に当たって、これを準用する。(2006.12.30改正)
 E「行政審判法」第11条、第12条、第16条、第20条及び第26条の規定は、課税前適否審査に関してこれを準用する。この場合「委員会」は「国税審査委員会」とみなす。(2008.12.26改正)
 F第1項各号の何れの一つに該当する通知を受けた者は、課税前適否審査を請求せずその通知をした税務署や地方国税庁長に通知された内容通り課税標準を早期決定するか更正決定をすることを申請することができる。この場合、当該税務署長や地方国税庁長は、申請を受けたとおり直ちに決定や更正決定をしなければならない。(2008.12.26改正)
 G課税前適否審査の申請・方法、その他必要な事項は大統領令が定める。(2008.12.26改正)

  (2009年3月 韓国・李信愛税務士邦訳 税理士長谷川博編集)